短編集

□”桜”それとも”菊”
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月光に反射する刀身。
抜かれる瞬間の心地よさ。

風のように駆け抜け、
光のように素早く。

全ては夢現の如く過ぎていく。
後に残されるはいくつかの屍。




昨夜も総司は闇討ちに遭った。
危ないのだから、夜、出歩くのをよせばいいのに、神谷さんの目を盗んで夜の京へと散歩に行く。
その理由を知っているから、私は総司と行く。

総司は変わった。
果たして本人が気づいているかは定かではないが。
私が総司と共にあるようになってからの変わりようからするに、前はもっとフワフワしていたのだと思う。
総司と仲のいい隊士はみなそう言う。
だが、私は今でも十分フワフワしていると思う。

頼むから死なないでくれよ。
私は総司といるから楽しいのだ。


縁側に座り、総司は私を見ている。
大丈夫。
総司がすごいから傷なんて無いよ。
そう言うと、総司はニッコリ笑う。
近藤さんや土方さん、ましてや神谷さんにも向けることの無い笑みで。
だから私も笑い返す。

それと同時に、不穏な影がこちらにやってくる。

総司は嫌な顔をした。
でも、とても嬉そうに見える。
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