L-Kaze
□第5章 与えるもの
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「神谷が切腹…」
一番隊の面々は小さく、しかし確実に呟いた。
誰もが嘘ではないかと瞬時にかんがえるが、そう告げた者の表情で真実だと知る。
総司の表情は“無”だった。
「私としては、一番隊の隊士が切腹を言い渡されたので、一番隊全員でそれを見届けようと思います。」
総司が日時を言い、解散を告げるまで、一番隊の者は黙って聞いていた。
「沖田先生…」
その場を離れようとしていた総司を相田は躊躇いながら呼び止めた。
「何でしょう」
「神谷はいったい何をしてしまったんですか」
「神谷さんは何もしてません。何かをしてしまったのは私の方です…」
「えっ、どういうことです!?」
「…切腹の時に土方さんが言うんじゃないですかね」
総司はそれだけ言ってその場を去った。
総司の顔が悲痛に歪んでいたため、誰も引き止めることは出来なかった。
「何かをしてしまったのは私の方って、沖田先生、それじゃぁ何も分からないですよ…」
去っていく総司の背中を見ながら、相田は山口とともに、増えてしまった謎に頭を悩ませた。