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□130年の時を超えて
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せいはよく夢を見る。
その夢の音を聞くことはできない。
場面はいつも違う夢を。
それでも、出てくる人はせいの前を歩いている。
袴姿に、癖のある髪を高めに縛り。

私はその人を呼び止める。

名前は知らない。
でも、口は勝手に動く。

張り裂けそうな気持ちを抑えて。

その人は私の声に反応して振り向く。
泣きたくなるような笑顔と、優しい響きを含んだ声で私を呼んでくれるのがわかる。


「…似てる。夢の人に」
顔ではなく、雰囲気が。
癖のある髪が。

――会いたい。
心がそう叫んでいる。

そこからせいの行動は早かった。
浅黄学園のことを片っ端から調べ、すぐに志望校を変えた。
全ては“沖田”と言う人物に会うため。
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