novel2

□うましか比べ
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*うましか比べ*




時計の針がやっとのことで一日分をぐるりと回るこの時間。
わたしはキッチンで二つのコーヒーを作って廊下を歩く。


愛しー
愛しー
ワガママな王子に尽くす、いたいけな家政婦は、冷めぬうちにと急ぎ足。
零さぬようにと忍び足。







「一哉くん?入るよー」


規則的なノックをしてから部屋に入る。


「あぁ。適当に置いておいてくれ」
「らじゃー」



返事をして机の端へコップを置くと、ベッドの上へと腰掛け部屋を見渡す。

散らかってはいるけど、案外汚なくはないんだよなぁ。




ぽふっ


ベッドに俯せになると香る、一哉くんの匂い。






「…なにやってんだ馬鹿。」

「バカってなによー」


「フ、馬鹿に馬鹿と言って何が悪い」

「悪いー。」



「……ばぁか。」

「あ、またバ






ちゅ。


「五月蠅い ばーか」





「……馬鹿って言う方がバカなんだからね。」







構うか、んなもん。


そう鼻で軽くあしらわれて、二人分に増えた重さでベッドが軋んだ。









眠気覚ましのつもりで持って着たコーヒー、きっと冷めちゃうから煎れたげるわ。

二人の夜が今から始まる。










fin
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