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□真似事
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「じゃあねっじゃあねっ!」
「おじ様が父様で、おくちゃんが母様!!」
その瞬間謙信は感じた。
明らかに自分の背中に何か得体の知れない……冷や汗が流れたのを。
阿国のことを、謙信のかわいい姪っ子たちは「おくちゃん」と呼んでいるらしい。
ということを、今日阿国が謙信と姪っ子たちと遊んでいる場に参加してくるまで謙信は知らなかった。
「……というか、どこで知り合ったのだ」
膝に乗っけた姪っ子たちにたずねると、
「お母様とよくお話してるもん」
「ね〜」
「ね〜」
三人はニコニコと顔を見合わせてそう言った。
「……姉上……いつの間に」
いつの間に、阿国と姪っ子たちを引き合わせてここまで仲良くさせたのやら。
謙信は眉間の皺を深くさせた。
「おくちゃん、今日は何して遊ぶ?」
「せやなぁ……せっかく四人いるし、スゴロクでもしよか?」
「スゴロクは前やったよ」
「別のことがいいなぁ」
「別のこと?」
阿国が不思議そうにたずねると、
「おままごととか」
その一言で今の状態があるわけで。
「……」
姪たちは向こうでお絵かきをしている。
さっきまでままごとをしようと待っていたのだが、二人がいつまで経っても向かい合ったままで動かないので、飽きてしまったようだ。
何故かと言うと……
「…………」
もじもじ。
謙信の目の前には、赤い顔をしてうつむき、畳の上に『の』の字を書いている阿国がいる。
「……おい」
「!?はっ、はいっ!?何どすかっ!?」
びくうっ。
謙信は普通に声をかけただけなのだが、阿国は肩を大きく跳ね上げて顔を勢いよく上げる。
「……何をそこまで緊張しているかわからぬが……これはままごとだぞ」
「そ、それ、は、そうどす、けど……」
今度は今度で、左手と右手の人差し指同士をツンツンとつつき合わせている。
阿国はどこから見ても照れていた。それはもう盛大に照れていた。
(…………意外だな)
そんな珍しく照れている阿国を見て、謙信は思う。
(案外ノリノリで『やろうやろう!』と言ってくるかと思ったが)