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□年下の男の子
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「伊勢姫様〜!」

「兼続様〜!」

 出会った途端、双方顔を輝かせて駆け寄ると

「お久しぶりです!息災でございましたか、姫様!!」

「ええ!兼続様もお元気そうで!!」

 今にも手を握らんばかりに微笑みあう。

 それはまるで……




「相思相愛、ってか?」
「っ!?」
 びくうっ。
 突然傍らに現れた弥太郎に、謙信は肩を震わせる。
「……や、弥太郎……貴様、一体いつから!?」

 ちなみに謙信、どういうわけか二人からやや離れた草むらに姿を潜めている。
 今日の政務も終わり、庭を散歩していると同じく散歩中の伊勢姫を見かけた。
 声をかけようとしたものの、そこへ兼続がやってきて、二人が話し始めたため入れなくなったのだ。

 そんなわけで、毘沙門天の化身で上杉家当主・上杉謙信と、泣く子も黙る上杉家武将・鬼小島弥太郎は草むらに縮こまってヒソヒソ話をしているのである。
「いや、今しがた来た。それで、どうにもこうにも怪しいお前の姿があったものだから」
 こうして同じくしゃがみこんでみたんだとこともなげに言う。
「……あ、怪しい……」
 顔をしかめる謙信に、弥太郎は重々しく
「……んー、その眉間の皺の出来具合から見るに、お前は二人を最初の出会いの場面からじっと見ているな?」
 それを聞いて謙信は器用なことに、しゃがんだまま後ずさった。
「なっ、何故わかった!?」
「…………。……謙信、お前ってやつは……」
 泣いていいのか笑っていいのか。
 困って弥太郎が呆れたような目で謙信を見つめる。
 それを見て謙信は自分の失態に気づく。
「……た、たばかったな!貴様、弥太郎の癖に!」
「お前ね……たばかるも何も、自分から言ったんだろーが。それに何だ、その弥太郎の癖にって」
 まったく人を馬鹿にしやがって、と弥太郎は顔をしかめる。
「あの二人か……確かに最近仲良しだな」
 気を取り直して弥太郎は談笑する兼続と伊勢姫を見やる。
「!?」
 びくり、と謙信の肩が震えるが気にせずに
「おお、そうだ。最近伊勢姫が兼続に武道を習っているという話も聞くぞ」
「……何!?」
「なんだ、初耳か?謙信ですら知らない情報だもんな、それが真実なら二人っきりか!二人っきりだったら、お近づきになる機会もそりゃたくさ……ってぇ謙信!!」
 何か不穏な空気を感じ取って隣を見ると、謙信が紙人形を手に何やらブツブツ呪文を唱え始めている。
「待て、落ち着け!今ここで兼続を殺(や)るな!!姫さんに血を見せていいのかお前!!」
「……心配ない、血を全て抜き取るだけだ」
「阿呆たれ、そんな問題か!!いいからおさめろ、その吸血紙人形!!」



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