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□小話格納庫:6
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『越後の海が』
『越後の海が、みたいです』
海なんてどこも同じだ。
塩っ辛くて深くて広くて緑色した青色で、晴れた日には輝いて曇りの日には果てしなく暗い。
波打つぐらいなら大きな池や湖でもできる。漣の音だって。
だから、さあ。
苛立ち紛れに砂利の浜を駆け下りて、海と陸の境界線で白い波を蹴り飛ばした。
跳ね返った塩っ辛い水が目に入って雫がこぼれた。
夕日が遠くに沈んでもバカ野郎と叫びもしない。
本当のバカ野郎は自分自身だから。
『あなたの見ている』
『越後の海が見てみたいです』
心の奥底から漣のようにこだまする。
*10/09
心の奥から響くさざなみ*