MAIN@
□賤ヶ岳が変。
2ページ/7ページ
話は数日前にさかのぼる。
「けんしーん、これなーんだ?」
突然謙信の執務室にやってきた綾は、謙信の目の前に一枚のチラシを広げた。
「……『日本一の美女決定戦』……?」
「何!?美女!?」
書類にハンコを押してもらおうと部屋にいた弥太郎は、美女と言う単語に素早く反応した。
「今度、近江の賤ヶ岳でやるそうよ」
「もしや、お綾様がお出になられるのですか?」
謙信の手伝いをしていた兼続が、わくわくとした眼で尋ねた。
「お綾様ならば優勝間違いなしです!」
「うふふ、ありがとう兼続。でもね、あたしのとこには参加の要請が来てないから」
「なんだぁ……面白くねぇな」
つまらなさそうに弥太郎がつぶやく。
「……姉上」
謙信はイヤ〜な予感がして、思わず綾の顔を見つめた。
「何かしら?」
しばらく見つめ合う二人。
「え?え?何です?」
「んあ?」
兼続と弥太郎はわけがわからず、二人を交互に見た。
「……うふふ……だけどねぇ、うふふ……やっぱり気になるじゃない……」
綾はというと、思い切り
「私何かたくらんでます」
というきらきらした眼で謙信を見つめている。
「まさか……姉上!」
謙信の顔色が見る見るうちに青くなる。
「そのとーり!!」
綾は高らかに笑った。
「行くわよ、賤ヶ岳に!!この綾姫様を差し置いて、どんな小娘が日本一の美女を名乗るのか、見てやろうじゃないの!!!」
くらあっ。
謙信は満面の笑みの綾を見て、めまいがした。
「け、謙信公!」
「しかっりしろ、謙信!!」
後ろにぶっ倒れそうになる謙信を、慌てて弥太郎と兼続が支える。
(よ、予想通りだ……)
謙信はどうにか体を起こすと、綾をにらみつけて叫んだ。
「あーねーうーえー!!何を馬鹿なことを言っている!?」
「あら、止める気?」
綾はふふん、と必死の形相の謙信を鼻で笑ってみせる。
「美女とか言う奴がつまんない女だったら、即座に乱入してやるのよっ!!」