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□賤ヶ岳が変。
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 話は数日前にさかのぼる。

「けんしーん、これなーんだ?」

 突然謙信の執務室にやってきた綾は、謙信の目の前に一枚のチラシを広げた。

「……『日本一の美女決定戦』……?」

「何!?美女!?」

 書類にハンコを押してもらおうと部屋にいた弥太郎は、美女と言う単語に素早く反応した。

「今度、近江の賤ヶ岳でやるそうよ」

「もしや、お綾様がお出になられるのですか?」

 謙信の手伝いをしていた兼続が、わくわくとした眼で尋ねた。

「お綾様ならば優勝間違いなしです!」

「うふふ、ありがとう兼続。でもね、あたしのとこには参加の要請が来てないから」

「なんだぁ……面白くねぇな」

 つまらなさそうに弥太郎がつぶやく。

「……姉上」

 謙信はイヤ〜な予感がして、思わず綾の顔を見つめた。

「何かしら?」

しばらく見つめ合う二人。

「え?え?何です?」

「んあ?」

 兼続と弥太郎はわけがわからず、二人を交互に見た。

「……うふふ……だけどねぇ、うふふ……やっぱり気になるじゃない……」

 綾はというと、思い切り

「私何かたくらんでます」

というきらきらした眼で謙信を見つめている。

「まさか……姉上!」

 謙信の顔色が見る見るうちに青くなる。

「そのとーり!!」

 綾は高らかに笑った。



「行くわよ、賤ヶ岳に!!この綾姫様を差し置いて、どんな小娘が日本一の美女を名乗るのか、見てやろうじゃないの!!!」



 くらあっ。

 謙信は満面の笑みの綾を見て、めまいがした。

「け、謙信公!」

「しかっりしろ、謙信!!」

 後ろにぶっ倒れそうになる謙信を、慌てて弥太郎と兼続が支える。

(よ、予想通りだ……)

 謙信はどうにか体を起こすと、綾をにらみつけて叫んだ。

「あーねーうーえー!!何を馬鹿なことを言っている!?」

「あら、止める気?」

 綾はふふん、と必死の形相の謙信を鼻で笑ってみせる。

「美女とか言う奴がつまんない女だったら、即座に乱入してやるのよっ!!」


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