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□年下の男の子
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どうにか謙信の暴走を止めた弥太郎であったが、ふと疑問が起こり尋ねる。
「……というか謙信、血を吸ったら紙人形はどうなるんだ?」
 謙信を止め、弥太郎は素朴な疑問をぶつける。
「それはもちろん、赤くなるに決まっているだろうが」
 その言葉に弥太郎は思わずつぶやいた。

「〈血を吸う赤い紙人形が空を飛ぶ!怪奇・春日山城!!〉」

「我の城はお化け屋敷かあああ!!」

「?」
「?」
 二人が怪しそうに草むらを見る視線を感じ、弥太郎と謙信は気配を殺したまま、全速力の忍び足でその場を離れた。



「あぁ……嫉妬かい」
 どうにか窮地を脱した二人は、兼続たちの姿が遠くからぎりぎり見える場所へ移動し、ようやく立ち上がった。
 そこで弥太郎は謙信の話をしばらく聞いてそう判断したのだった。
「……いや、そういうわけでは……」
 そうは言うものの、確かに謙信の表情はいつもの引き締まっていて、深く考え込んでいる僧侶のような表情のまま。
 ただし、いつもは鋭く溢れるほどの自信の色に満ちている瞳の色が、今日は鈍く翳っている。
(わかるやつにはわかると思うなー)
「……わ、我が誰に嫉妬など」
 しかし問い詰めてもまったく認めようとしない謙信に、やがて弥太郎は
「やれやれ。それじゃあ俺、そろそろ行くから」
 まだ話している兼続たちの方へ行こうとした。
「……行くのか?」
「元々兼続に用事なんだ。……お前はどうすんの」
「……」
「わかった、俺は行くよ」
 二の足を踏んでいる謙信に、弥太郎はため息をついて歩いていった。
「……」
 謙信はなすすべもなく、ただその後姿を見送ったのだった。


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