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□年下の男の子
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「ですから、どうしてもビームが出せなくて……」
 私の義が足りないのでしょうか、と伊勢姫はうなだれる。
「そんなことはありません!伊勢姫様の強い愛の力があれば、必ずや兼続以上のビームが出ます!」
「まあっ」
 それを聞いて、ぱっと伊勢姫の顔が明るくなる。
「ありがとうございます、兼続様。私、頑張ります!」
「ええ!」
 がしっ!
 そして二人は自然に熱く見つめ合い、熱い握手を交わした。


「……」
 離れたところでその会話を聞いていた弥太郎は、思わず顔をしかめてたずねた。
「……すまん、何その会話」
「あら、鬼小島様」
 二人は固く握りあっていた手を慌てることなく離し、弥太郎に向き直る。
「今姫様と、ビームの出し方について議論を……」
「私、兼続様にご指導を受けているのに、なかなか……」
「……随分と色気がない上に物騒な議論ね……」
 もし姫がビーム出せるようになったら、謙信は腰を抜かすなあ……。
 弥太郎は遠い目をして考えた。
「ところで鬼小島殿、何かご用では?」
 兼続の言葉に弥太郎は我にかえる。
「おおう、忘れてた。兼続、お前宛ての手紙が大量に来てたぞ。重要書類もあるから処理してこい」
「わかりました!では伊勢姫様、また後ほど」
 深々と兼続は頭を下げて、走り去っていった。
「……後ほど?」
「今日も鍛練の約束をしてますの」
 にこにこと伊勢姫は楽しそうに笑う。
「……はあ、さいですか」
 いつの間に一緒に鍛錬する約束までするようになったのやら。
「……あいつ、案外やり手だな」
「はい?」
「いいや、こっちの話で」
「それにしても、兼続殿って」
 くすくすと白い手で口元を隠し、伊勢姫は可憐な花のように笑みを浮かべた。


「かわいいお方ですね」


「……は?」
「殿方にかわいいなんて失礼かもしれませんけれど」
 困惑する弥太郎に、小さく首をかしげて言葉を続ける。
「景虎様の後ろを、子犬のようについていく兼続殿ってかわいらしいお方だと思いますわ」
「かわいい、ねぇ……」
 どう答えていいものか、弥太郎は頭をかく。
「あー、なんといいますか。あれはただの義バカといいますか……」
「まあっ、それでは兼続様に失礼ですわ鬼小島様」
 優美な眉をひそませ、非難めいた視線を投げかける。
「兼続様は真面目で向上心あふれ、自らの執務に熱心なお方。それをそういうなんて……」
 あわてて弥太郎は手を横に振る。
「そこは俺も認めます。……しかし、一見冷静に見えるくせしてあいつは思い込んだら周囲が見えないところがあるんで。心配なんですよ」
「鬼小島様は兼続様のことをご心配されているのですね」
 伊勢姫のその言葉に
「……心配、というより暴走されて困るのはこっちです……」
 はあ、と弥太郎はため息をついてうんざりしたような表情を見せた。
「うふふ、優秀な後輩を持たれると大変ですわね」
 くすくすと楽しそうに伊勢姫が笑う。


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