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□小話格納庫:4
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「おじ様ー!」
ぱたぱたとかわいらしい足音に、謙信は書き物の手を止める。
「……どうした?」
なるべく普段どおりの表情で振り返ったつもりだが、その顔には笑みが浮かぶ。
「ご本読んで!」
障子の陰から明るい笑顔を見せたのは、謙信の幼い姪(姉妹の妹の方)。
見ると、子ども向けのお伽話が書いてある本を大事そうに抱えている。
「……わかった」
そう言い手招きすると、姪は嬉しそうに謙信に駆け寄る。
「今日はこの本がよいのか」
「うん!」
あぐらをかいていた謙信の足の上にちょこんと座ると、背中を謙信の胸に預ける。
「あーっ!ずるいー!」
とそこへ、もう一人の姪(姉妹の姉の方)がやってきた。
「おじ様!あたしもあたしも!」
「姉様は来ちゃだめー!」
「一人だけずるい!私も抱っこしてほしいもん!」
「……こら、喧嘩するでない」
やれやれ、と謙信は呆れ顔で二人を止める。
「……仕方ない、そなたも来るがいい」
そういうと、姪(妹)に言って少し場所を空けさせ、姪(姉)を空いた膝に座らせる。
「これでよかろう」
二人分の体重がのっかって足が痛いが、我慢できないほどではない。
「「はぁい」」
渋々、といった風な二人に苦笑いしつつ、
「……では読むぞ。昔むかし、あるところに……」
「あらあら……モテモテねえ謙信」
たまたま通り掛かった綾は、微笑んで子守をする謙信を見ていた。
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子どもの特権*