MAIN@

□小話格納庫:4
4ページ/14ページ




「おじ様ー!」
 ぱたぱたとかわいらしい足音に、謙信は書き物の手を止める。
「……どうした?」
 なるべく普段どおりの表情で振り返ったつもりだが、その顔には笑みが浮かぶ。
「ご本読んで!」
 障子の陰から明るい笑顔を見せたのは、謙信の幼い姪(姉妹の妹の方)。
 見ると、子ども向けのお伽話が書いてある本を大事そうに抱えている。
「……わかった」
 そう言い手招きすると、姪は嬉しそうに謙信に駆け寄る。
「今日はこの本がよいのか」
「うん!」
 あぐらをかいていた謙信の足の上にちょこんと座ると、背中を謙信の胸に預ける。
「あーっ!ずるいー!」
 とそこへ、もう一人の姪(姉妹の姉の方)がやってきた。
「おじ様!あたしもあたしも!」
「姉様は来ちゃだめー!」
「一人だけずるい!私も抱っこしてほしいもん!」
「……こら、喧嘩するでない」
 やれやれ、と謙信は呆れ顔で二人を止める。
「……仕方ない、そなたも来るがいい」
 そういうと、姪(妹)に言って少し場所を空けさせ、姪(姉)を空いた膝に座らせる。
「これでよかろう」
 二人分の体重がのっかって足が痛いが、我慢できないほどではない。
「「はぁい」」
 渋々、といった風な二人に苦笑いしつつ、
「……では読むぞ。昔むかし、あるところに……」


「あらあら……モテモテねえ謙信」
 たまたま通り掛かった綾は、微笑んで子守をする謙信を見ていた。



*2/27
子どもの特権*

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ