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□小話格納庫:4
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「……」
謙信が固まっている。
先ほどから、雛人形を手に固まっている。
「何やってんだ、お前」
うっかりその現場に出くわした弥太郎が、廊下から部屋の中へ声をかけると。
「……どうしよう」
「何が」
「雛人形を早くしまわねば、姪たちが嫁に行くのが遅くなる。しかし、別に遅くなってもいいんじゃないかと思う我がいる」
おじ様、おじ様と自分を慕ってくれる姪っこたちは、理想の結婚相手は?と誰かから尋ねられるたびに「おじ様!!」と元気よく答えてくれる。
まり遊びだって貝あわせだって誘ってくれるし、一緒にかくれんぼだってする。
そんなかわいい姪っこたちがやがて大きくなり、自分の手元を離れるなんて想像できない。
できないったらできない。
「……ということなのだが……」
弥太郎に延々と姪っこたちのかわいらしさを語った後で、ひどく真剣な表情で謙信は首をひねる。
「……どうしよう?」
「……相当な姪バカだな、お前」
まあ今に始まったことでもないか、と弥太郎は深々とため息をついた。
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今目の前にあるものを*