天恵
□〜その一言から。〜
1ページ/7ページ
「やはりこれは運命なのだ!」
兼続が城内に響き渡るほどの大声で言った。
〜その一言から。〜
ここは豊臣秀吉の城である。
本日はここで宴が行われる事になっていて、
そして秀吉の希望で阿国が舞いを披露する事になっている。
本当ならば、豊臣家や家臣の者しか宴には参加出来ないのだが、阿国からの願いで特別に慶次、兼続、幸村、政宗も参加する事になった。
そして、今の状況である。
「……何が、運命なのですか?」
と幸村が兼続に質問した。
確かにこの状況で叫ばれたら聞き返すのが普通なのだろうが、幸村以外の者は聞く気が起きなかった。
「よくぞ聞いてくれた!幸村!」
兼続が生き生きとした表情で話始めた。
なんとなく嫌な予感がする。
そして兼続は爽やかな表情で、
「阿国殿は私の妻が相応しい!そう!これは運命なのだ!」
はたまた大声で言った。
その場にいる慶次以外の者が溜め息をつく。
「運命だと!?ほざくな!馬鹿めっ!!」
そして政宗が大いに反論した。
「黙れ山犬!これはもう決まってる事なのだ!」
幸村は終始呆れ顔をしている。そんな時、兼続が幸村の方を向いた。
「幸村ぁ!!!」
「はっ、はい!!」
突然話を振られて、しかも大声で名前を呼ばれて幸村は驚いた。
「我が主・謙信公はおなごを寄せ付けなかったのを覚えているな!?」
「はい…そうでしたね…」
兼続の気迫にやや押され気味に幸村は答えた。