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□春の嵐!
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(注!オリジナル綾姫が出てきます)



「謙信公!」


ある日のこと。
城の庭を散歩中の謙信は誰かに呼び止められた。
振り返ってみると、そこには……
「……?兼続……?」
ひどく真面目な顔をした兼続が立っていた。
兜の下に見える瞳は、まっすぐ謙信をにらみつけている。
立派な眉もきれいな角度で上がっており、一目見たところ怒っているように見えた。

――……何かしただろうか

謙信は内心首をかしげた。

――……この間飲みすぎたことか?いや、でもあれは宴の席だったし、兼続や前田慶次もかなり飲んでたし、おあいこじゃないか?

――……それに大体飲み潰れた二人を引きずって、それぞれの部屋まで運んだのは自分だし、恨まれるはずはない

――……はっ!ま、まさか、この間城内に迷い込んだ子犬をこっそり部屋に入れたのがバレたか!?

「……いやしかし、あれは姉上がいいと言った……」
うつむいてぶつぶつ何かをつぶやく謙信に、兼続が不審そうに声をかける。
「……謙信公?」
はっ!
その声で思考の海から引き戻された謙信は、
「……どうした」
兼続の纏う空気の重さに並々ならぬものを感じ、話の続きを求めた。
「お話があります」
「……ふむ」
すると、兼続は一歩謙信に近づいたかと思うと、
「はっ!!」
いきなり謙信の顔めがけて護符を投げつけた!
「!?」
べしいっ!
目の前のことで避けるに避けられず、護符は見事に謙信の額あてに引っ付いた。
それはまるでキョンシーのお札のごとく、ベラーンと謙信の額から垂れ下がり視界をふさぐ。
――……な、何だ?
突然のことで、謙信は目を白黒させた。
「……謙信公。ご無礼をお許しください……しかし……しかし私には……!」
視界が半分途切れていてよくわからないが、兼続はどうやら片手を額に当て空を仰ぎ、苦悩の表情を浮かべている……ようだ。
「これも義のため、いや愛のため……!」
一方、謙信はそれどころではなかった。
「……取れぬ」
護符は痛くもかゆくもないのだが、とりあえず邪魔なので謙信は取ろうと下へ引っ張ってみた。
みょーん、と護符が見事に伸びた。
「……む」
ぱっと手を話してみると、それは見事に縮む。
どうやら、ゴムのように護符は伸び縮みするようで取れる気配はない。
「……どういうことだ?」
この場合文章の主語は、『この護符が取れないんだが』である。
しかし、兼続は別の意味に取ったらしく。
「これは……これは、私の愛のための戦いなのです!」
――……意味がわからん
仕方なく、兼続の話を無視して護符と格闘する。
あちこちへ引き伸ばしても元の大きさになるので、あきらめて謙信は暖簾をくぐるかのごとく護符をめくり上げることにした。
それから、額あてと頭巾の間に護符の下半分を挟み込む。
「……は?」
護符の相手をしているうちに、話が進んでしまったようだ。
拳を握り締め、兼続は熱く語る。

「謙信公!阿国殿をかけて私と戦っていただきたい!」

「……え?」

突然のことに、謙信は再び目を白黒させた。
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