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□温泉に行こう!
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うららかな、ある晴れた日の昼下がり。
「けんしーん!」
足利将軍への拝謁を済ませ、京の都をぶらぶらしていた謙信は聞き慣れた声に足を止めた。
「……宿敵」
「いいところで会った!手紙を書くかどうしようか、悩んでおったのじゃよ」
そこにいたのは、天下統一を目前にした武田信玄だった。
関ヶ原での対決以降、謙信は信玄の天下取りに協力するようになっていた。
ただし、ここ最近謙信が越後に帰っていたので会うのは久しぶりのことになる。
「……何の用だ?」
「実はな……九州に行かんかな〜と思ってな」
「……九州?それでは、とうとう……」
謙信の目が鋭く光る。
「うむ。島津攻めじゃ」
「……そうか。わかった、では戦の準備を」
「ああ。頼むぞ」
細かい日程はまた連絡する、といい信玄は謙信と別れようとした。
……しかし。
「……宿敵」
別れ際何か思いついたように、謙信が尋ねた。
「ん?なんじゃ?」
「……九州とは、どんなところだ」
「そうじゃの……」
尋ねられて、しばし信玄は考えこむ。
「温かくてー、火山があってー、鉱山があってー、大陸との貿易の窓口でー……おお、そういえば温泉もあるの」
謙信は思案顔でそれを聞き、
「……ふむ。わかった」
礼を述べると人ごみの中に消えていった。