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□イノルコイ
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『つらかりし人こそあらめ祈るとて 

     神にもつくすわがこころかな』







どれほど祈っても届かない想いもあるのだと



知っていながら祈ったのは



己の弱さか戯れか





――――何故

その腕をつかまなかったか



――――何故

反対を退けなかったのか



――――何故

攫って逃げなかったのか






――何故


  出会ってしまったのか――





 草木もない、逃げる場所もない

 寒風吹きすさぶ”己”という荒野を一人

 鎖を引きずり彷徨い歩く

 ただ、前だけを見据えていればいい





 それすらも宿命と名づけるか





「謙信様!」





――その声は、光





 荒野を突き進むために

 一度封印した感情



 今返り来るその感情をなんと呼ぶ?

 ……答えはすでに、この胸に





「んもう、待っておくれやすっ!」





 声が聞こえる



 後ろから追いかけてくる気配がする



 振り返るなら



 微笑むなら



 手を差し出すなら






 封印した感情を、解き放つなら







 ……今かもしれない










「……来い」






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