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□及ばぬ恋よと捨ててはみたが
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むかーし昔。
あるところに阿国という少女がおりました。
阿国はおかっぱヘアーと巫女装束がよく似合う少女……いえ美少女でした(どこからともなくカンペが出たらしい)。
阿国は早くに両親を亡くしており、近所のお金持ちの家に引き取られ生活しておりました。
阿国を引き取った義理の父親は、蝶ネクタイのついたシャツの似合うサルでした。
「誰がサルじゃああああ!わしゃあ人だがね!」
す、すいません、間違えました。
えーと、秀吉という人間です、はい。
「秀吉様、よろしゅうお願いします〜」
ぺこり、と阿国が頭を下げたとたん、
「いやぁ、わしが阿国殿のような美少女の父親なんて嬉しいのう!一つ屋根の下なんて考えるだけで夜も眠れんよ〜」
秀吉はデレデレになり、頭をかきながら満面の笑顔でそう答えました。
さすが女好き、女の子の前では紳士です。
「ややわぁ、お父はんたら〜。お上手なんやから〜」
「お父はん!!ああ〜なんて素敵な響きなんじゃ〜!!」
デレデレ顔の秀吉は阿国の手を握ると、
「ここは親子の証として、今夜あたり一緒に風……ぐぼあっ!!」
「お前さまあああ!!!」
ドガッ!!!
口説きモードに入った秀吉の脳天に、鋭い肘鉄が振り下ろされました。
「お前様!!あれほど浮気はだめだよって言ったのに!!」
「あ、お母はん」
肘鉄を振り下ろしたのは秀吉の妻、つまり阿国の義母・ねねでした。
ねねは才色兼備を絵に描いたような女性で、明るく美人で快活で、更に家事もパーフェクトという秀吉にはもったいないくらいの女性でした。
今でも一体秀吉のどこがよかったのか、と首をひねる人がいるほどです。
「もうっ!!阿国ちゃんに何かしたらあたしが許さないからねっ!!」
そう言うとねねは阿国をぎゅっと抱きしめました。
「うちの人がごめんなさいね、阿国ちゃん。何かあったらいつでもあたしに言うんだよ」
「はぁい、お母はん」
義母と義理の娘という関係ではありましたが、二人の関係は大変良好でした。
「あ、そうだ。シンデレラやるんだったら義理の姉がいるんだよね?」
ああ、そうですね。
「じゃあ今紹介するね。はいカンペ」
あらら、登場人物からカンペをいただいてしまいました。
どれどれ……コホン。
秀吉とねねには三人子どもがおりました。
つまり、阿国には三人の義理の姉がいたのです。
その三人はとても美しい……
「……」
美しいむ……
「おい三成、少しは笑ったらどうだ?」
「そうですよ、三成殿!笑顔です!」
むす……こ?
「誰が息子だ!どこからどう見ても、この兼続は美しい娘ではないか!」
自信満々そうな兼続。
うーん、誠に残念ですが金髪タテ巻きロールのカツラと若葉色のドレスが似合ってません。
「……(不機嫌オーラ全開中)」
その隣には、何故か水色のドレスに身を包んだ三成。
全身から不機嫌オーラが出まくっています。
「くっ、何で俺がこんなこと……!!」
恥ずかしいのか怒っているのか、顔が真っ赤です。
「で、でも、よくお似合い……」
そう声を恐る恐る声をかけたのは、オレンジ色のドレス姿の幸村です。
「ほめられている気がせんわ!!!」
「すっ、すみません!」
三成の怒鳴り声に幸村は縮み上がりました。
「落ち着け三成……これも義だ!」
ぐっ。
兼続はさわやかな笑顔で親指を立ててみせました。
「嘘をつけええっ!!」
すぱーん!!
額に青筋を立てた三成の鉄扇が、兼続の後頭部にクリティカルヒット!!
……え、えーと……
ねねと秀吉の娘(ということにしておいてくれ by兼続)は、兼続・三成・幸村といいました。
三人は見目がよいだけでなく文武にも優れており、社交界でも注目されている正真正銘のお嬢様でした。
「誰が女だっ!!俺は違うぞ!!」
「落ちついて三成殿!」
「こらー!喧嘩はダメだよっ!!」
「にぎやかでええどすなぁ〜」
「……あ、ねねが無双奥義発動したがね……大丈夫かのう、三成」
そんなこんなで、阿国は大変幸せに暮らしておりました。