依頼物置場

□CHAOS!
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東と西を救援活動に向かわせた瞬はこの件の報告の為、むささびに戻ろうとする。
しかし、そんな瞬に向かって歩み寄る、一つの影があった。



「・・・誰だ!」
「俺だ。」



そこに現れたのは、なんと志真だった。
若干疲れた表情で志真は軽く右腕を回し、その右手には何かが握られている。



「お前か・・・しかし、何故こんな所に?」
「『怪獣取材の専門家』として、怪獣出現の詳細を世に報告する為の取材・・・って言ったら自然か?まぁ、本当は違う理由だけどな。」
「違う理由?」
「これこれ。」



志真は右手を差し出し、握っている「それ」を瞬に見せる。
握られていたのは先端が黒い銀色の見慣れない筒状の物だったが、瞬にはこれに見覚えがあった。



――・・・はっ!
あれは確か、あいつの話に出て来た・・・!


「志真さーん!瞬さーん!」



2人を呼ぶ声と共に現れたのは、「フェアリー」体のモスラを隣に連れ2人に手を振る遥だった。
志真に続いて瞬は何故遥がここにいるのかを疑ったが、すぐに怪獣の出現を一早く察知したモスラが擬態を使い、遥を連れて来たのだと考えた。
が、すぐにまた違う疑惑が瞬の頭をよぎる。



――・・・それにしては、ここへ来るのが早い気がするが・・・?


「よっ、遥ちゃん。モスラ。」
「はい、志真さん。瞬さんとは、元旦の電話以来ですね。」
「あっ・・・あぁ。そうだな。」
「あの時は突然電話してすみません。つい嬉しくなってしまって・・・」
「いや、確かにあの時は驚きはしたが、だからと言って俺はどうと言う気は無い。だから別に気にしなくてもいい。」
『全く、無断でわたくし達の秘密話を夢で聞いてしまうなんて、遥も不粋ですわ。』
「そうなのか・・・って、なっ!?」



普通に聞き流してしまったその声を、瞬は驚愕の声を上げる形で確認する。
上品な女性の声だったが、志真はともかく遥はそんな声質では無い。
しかしながら辺りを見渡しても他の人物がいる気配は無く、第一にこの声はすぐ近くから聞こえて来ていた。



「い、今の声は・・・」
『あら、ご存知ありませんの?遥からお話は聞いたと思いますけれど?』
「妃羽菜から・・・?」


――・・・まさか!



確信を持った瞬が直ぐ様見た者、それは遥の隣を未だ飛ぶモスラだった。



「あれ、瞬ってモスラが『結晶』を使わなくてもテレパシーで意思疎通が出来る様になった事、知らないのか?」
「テ、テレパシー?」
「長い間、私達の世界に来る内に覚えたらしいです。今はそれほどではないんですが、よく私の家にも来ていましたし。」
『そうですわ。小美人がわたくしはインファント島の守護神だからと言う理由で、外出を許してくれませんの。ですけど、わたくしだって退屈にもなりますわ・・・』
「でもまた、黙って島を抜けたら駄目だよ。今日は私も協力するから、小美人さんに謝ってね。」
『わっ、分かりましたわ・・・』
「しかし、モスラもこうして見ると人間みたいだよなぁ。しかもちょっとわがままなお嬢様。」
「ふふっ、そうですね。」
『そっ、そんな事・・・そういえば志真、貴方も何故もう少しだけ待って下さらなかったの?貴方が怪獣を倒してしまったら、わたくしが来た意味がありませんわ。』
「いやぁ、早くやってみたかったと言うか・・・だって、ずっとテレビで見てたヒーローみたいに活躍出来るんだぜ?」
「それに、モスラは最初から観光目的で来たんでしょ?だったら、偶然じゃない?」
『もう、遥までわたくしにそんな事をおっしゃるなんて、酷いですわ。』



違和感も無く話し合う、2人と一体を横目に瞬はただ見ている事だけしか出来ないでいた。
これまで非現実的な事には嫌と言う程遭遇して来たが、眼前で繰り広げられる光景は瞬にはあまりにも非現実過ぎたのだ。



――・・・あのアイテムに、この光景。
これは、夢で見た・・・いや、あの2人が見た夢の内容そのままだ・・・
何故こんな事になっているんだ・・・こんな夢の様な光景が現実になっていいのか・・・
この世は・・・俺は、一体どうなってしまったんだぁーっ!!
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