依頼物置場

□山神‐Varan's memory‐
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気がつけば、知らない世界にいた。






ここは何処だ。






私がいた所は、こんなにも寂れていなかった。
もっと木々は生い茂り、空の光も強かった筈だ。
何より、私以外にケモノの気配を全く感じない。
私の頭に残る記憶、それは空から落ちてきた途方も無い光、凄まじい閃光と圧力。
・・・そうだ、私はそれから逃れる為にこの水の塊に飛び込み、そのまま自らを封じたのだ。
この世界は、あのまま滅んでしまったのか?
私を残して・・・






私はそれを確かめたくなり、まず水から出て木々へ向かって歩いた。
しかし、何かおかしい。
何だ、この違和感は。
私が私で無い様な、そんなものを感じずにいられない。
全てが分からない。
この先を行けば、それが見えてくるのだろうか。






・・・そういえば、私の周りにあるものはこんなにも小さかったか?
私の足元程しかない木など、見た事がない。
目の前に見えるあの岩も、こんなに小さいものだっただろうか?
否、そうではない・・・私自身が巨大となっているからだ。
そして眼前の岩を意図も簡単に押し分けて見えたものは、私を更に混乱させた。






そこにいたのは、見た事も無い小さな生物。
どの生物も二本の足で歩行し、何やら聞き覚えの無い声を発しながら私から逃げている。
周りにはこの自然とは似つかわしくない建造物が多数あり、そこからあの生物が出てきている。
あれが住処なのか?踏みつけてみたが、これも簡単に壊れてしまう。
もはや、私は訳が分からなかった。
何故、こんなものがあるのか。何故、こんなにも変わってしまったのか。
何故、私はこんなにも・・・






気が付けば、辺りの光景は酷く変わっていた。
無論、それは私の力。
それはまるで神の如き力・・・あの光が、私にこの力を授けたのか?
私は只のケモノとして生きていた筈・・・分からない、私自身が。






だが、一つだけ分かった事がある。
目の前で怯えているあの生物達の目は私を畏敬の対象として捉え・・・恐れている事。
あの生物達にとっては、私は神に写っている。
・・・ならば、私は奴等の神となろう。
これは天が私に与えた定め、これからの私の成すべき事なのだ・・・
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