依頼物置場

□もしも・・・
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「う、う〜ん・・・」



けたたましい目覚ましの音の中、志真は気だるそうな呻き声を上げながら目を覚ました。
目を半開きにし、布団に入ったまま志真は目覚ましを切ると、また眠りに付く。
しかし、半時間経って彼はそのまま起きなかった事を後悔する事になる。





「うわああぁーっ!寝坊したぁー!!」



先程の目覚ましにも負けない叫び声と共に、再び志真は目を覚ました。
時計は午前6時半を差しており、これが志真の絶叫の理由だった。



「やばい、やばい、やばい・・・!」



志真は慌ただしく部屋を出て階段を下り、台所へ行くとすぐさま机の上に置いてあるパンを掴んで台所を去る。
台所では母親の恵が食器を洗っていたが、恵が気付いた時にはもう志真は玄関にいた。



「あら哲平、おはよう・・・」
「おはよう!悪いけど遅刻しそうだから、パンだけ持ってくな!」
「てっ、哲平!?・・・とりあえず、急ぎ過ぎてパンを詰まらせたり、事故したら駄目よ〜!」
「分かった!いってきまーす!」



家を出た志真はパンを口にくわえながら自転車に乗り、力の限りペダルをこいで何処かへと向かった。
器用に口だけでパンを食べつつ、志真は減速せずに車の通らない道路を走り続け、町中に入ってもなおスピードを保ちながら長めの坂道を下る。
そしてパンを食べ終わった頃、志真はとある工場の駐輪場に自転車を止めていた。
そこから駆け足で志真が入ったこの工場こそが、志真の仕事先であった。





「すみません、寝坊してしまいました!」
「・・・今月で二回目か。次遅刻したら欠勤扱いだからな。気をつけろ。」
「分かっ・・・はい。」



灰色の作業服に着替え、慌てて事務所に現れた志真に釘を刺したのはこの事務所の作業長を勤める志真の父・永次だった。



「とにかく、早く作業に取り掛かれ。成果によっちゃ今日の失態は勘弁してやる。お前らも、もう作業に入っていいぞ。」
「「「了解!」」」
「りょ、了解!」
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