second
□匂い
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まだ、薄暗いのに目が覚めた。
隣にあった温もりが無くなったからかもしれない。
「なまえ」
返事は帰ってこなかった。
まだ起きてない体を起こし、全部屋を探したが見つからない。
ふと、視線を動かせばベランダに赤い光が灯っていた。
「何してんの」
「ごめん、一服してました」
彼女は喫煙者。
俺の家で吸うときは、ベランダで吸っている。
「部屋で吸っていいのに」
「てっちゃんは、今が大事なときなんだからそれは嫌」
確かに忙しいスケジュールをこなしていた。
「服着て、風邪引くよ」
下着だけ、履いて出てきたから心配している。
「それに、ちゃんとご飯食べてる?」
少し痩けた頬を撫でながら言う。
「本当、心配」
なまえは心配性。
手術してから、尚更酷くなった気がする。
「大丈夫だって、なまえか一番知ってるでしょ?」
バーっと赤く染まる頬を撫でると、すり寄ってくる。
その様子は、猫みたい。
「てっちゃん、好き」
「知ってる」