鋼鉄
□心地良いだなんて認めない
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『聞いてよドラ〇もーん』
『どうしたの?のび〇君』
それはあまりにも衝撃的なことだった。
『またジャイ〇ンに苛められたんだ〜…』
『全くもうキミは情けないなぁ』
寒い冬、無理して身体を鍛えるなんてことをしなくなった、否、戦もない今ではそんな必要もなくなった趙雲は無駄に余った元気を炬燵の中で持て余しながらテレビにかじりつく。炬燵でアイスという贅沢を堪能していた魯粛からアイスを奪い、ひと苛めした後だった。
魯粛は隣りにはいない。
最初はアイスを奪ったこちらを妬んでこちらの思惑通り難癖をつけてきたのだが、毎度のことに遂に呆れるという手段を身に着けたらしい。溜め息をついて出て行った魯粛の行き先を趙雲は知らなかった。
知る必要もないし、知りたくもない。
「全く…、なんで僕がアイスなんか…」
無邪気に鳴り続けるテレビの音がやけに五月蠅い。
舌の上で溶ける甘いはずの冷たい感触が分からない。
そもそも甘いモノも大して好きじゃない。スプーンが無意味にバニラのアイスを掻き回した。
『ドラえ〇ーん…、なんか道具出してよぅ〜…』
『仕方ないなぁー、』
魯粛は今どこにいるのか。
大方、予想はついている。諸葛瑾の所へ泣きつきに行っているのか、一人あてもなく冷たい空の下を歩いているのか。
『もう、今回だけだからね。―――――、』
後者なら、まだいい。
「ちょっと趙雲どの!何アイス残してるんですかっ!」
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