鋼鉄

□蕾
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ただ、ごく自然にさらりとそう言ってのけると魯粛は一瞬驚いたように目を見開いて――、
直ぐに困ったようにあわあわと顔を伏せた。

「え、いやっ、その…、別にそういうわけでは、ないのですが…」

帽子の影に隠れて顔はよく見えないが耳が赤い。声に至ってはだんだん小さくなって、最後のほうは殆ど消えかかっている。


「…へえぇ」


孔明絡みならばともかく、魯粛は普段は毅然としていて、外交などにも堂々とした態度で臨む男だ。

――その魯粛が

思わずにやにやと口許に笑みを浮かべると魯粛がパッと顔を上げた。

「な、なんですか…っ」

「いやいや、なるほどねぇ〜」

焦ったように詰問し慌てている魯粛を見て、確信する。諸葛瑾はしばし考えを巡らせた。

これ以上此処で勿体ぶれば魯粛は心持ち唇を尖らせて「嫌な感じ」と拗ねるに違いない。しかし、言ってしまえばどうなるか――



(別に、アンタの機嫌を損ねるつもりはないんだけど…)

その二つのパターンの両方とも想像出来てしまった諸葛瑾はどちらにせよ魯粛の機嫌を取るのは難しいと悟って、思わず苦い笑いをその顔に浮かべた。










――孔明以外にいい人が出来たのかい?

なんて少し冗談めかして聞いたら、貴方はきっと今以上に真っ赤になって慌てるに違いない。

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