鋼鉄

□心地良いだなんて認めない
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「…、え」






テレビの騒音が他の音に邪魔されて一気に遠のいた。

目の前にはいつの間に部屋に入ってきたのか、首に薄ピンクのマフラーを巻いた魯粛が立っている。せっかく私が譲ってあげたのに、とこちらに非難の目を向ける魯粛の手にはここから徒歩五分の所にあるコンビニで買ってきたのであろうビニール袋が一つ握られていた。


「趙雲どのが食べちゃうからわざわざ買いに行ったんですからね!なのに残すなんて!もう、信じられませんっ!」


魯粛の言葉に視線をテーブルの上のカップアイスに向ければ、コタツの熱に溶かされたのかそれとも趙雲が無意味に掻き回したのがいけなかったのか、アイスはドロドロに溶けていて、もはや原形を止どめていなかった。それをぼんやり確認してから、目の前の男が何処にも行かず帰ってきたのが信じられなくてもう一度その姿に目をやる。

よほど外が寒かったのか風邪を引いたかのように魯粛の鼻は赤かった。




知らずのうちに趙雲の口に微かな笑みが浮かんだ。

「ふぅん…」

その呟きが酷く満足げに部屋の空気を振動させたのを、趙雲は知らない。

一瞬、考えた末に趙雲は素早く溶けたアイスを口に含み、魯粛のマフラーを引っ張った。

「!、…っん」

バランスを失い、こちらに倒れ込んできた魯粛の唇を奪う。舌を差し入れ、溶けたそれを無理矢理嚥下させると魯粛が暴れた。

その隙に手から離れたアイスの袋を奪う。




「ぷはっ、何するんですか!きもちわるい……、あっ!」

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