蒼穹

□春ですよー
1ページ/1ページ




「お花見、ですか…?」

咄嗟に鸚鵡返しのように繰り返してしまってから、陳羣は自分が口にしたことの意味を理解しようとして、目の前の人物を凝視した。

執務室の窓からは咲き乱れる桜の花が見える。

微かに肌寒さは残るが陽は出ているし、日向にいれば問題ないだろう。確かに花見日和だ。が、今日の分の執務を始めてまだ十五分と経ってはいない。

目を点にする陳羣に、流石に彼が考えていることが伝わったのだろう。荀イクは小さく苦笑すると、筆を置いて綺麗な動作で立ち上がった。

「根を詰め過ぎても身体に毒です。少しぐらい殿や奉孝の真似をしたところで、誰も怒りはしませんよ」

それを聞いて、陳羣は改めて外を見やる。さわさわと気持ちのいい風と共に薄紅色の花弁が丁度窓から入ってくるところだった。

司空府に泊まりがけで執務を始めて三日目。もうどれだけ自分は外の風を吸っていないのだろう。その時になって、急にそれに気付いた。

「…そうですね」

ぼんやりと窓に視線を向けたまま動かなくなったと思ったら、暫くしてゆっくりと頷いた陳羣を見て、荀イクは唇の端を弛める。

「厨房に寄って何か貰ってから行きましょう。いい場所があるんです」
「いい場所、ですか…?」
「詳しいところは行ってからのお楽しみです」
「!、はいっ」

荀イクの悪戯っぽい笑みに陳羣はニコニコと頷いて立ち上がる。単に久々の休養というだけでなく、これから普段から憧れのこの人と二人で花見をするのだと思うとそれだけで自然と笑みが浮かんだ。



早くも疲れの抜け始めた陳羣の、久し振りに見るような眩しいその笑顔が、

既に宴会騒ぎを起こしているであろう曹操と郭嘉の待つ会場に着くまでのものだけであるということが容易に想像が付いた荀イクは、告げようとしていた言葉を飲み込んだ。






【春ですよー】



(お、やっと来たか!)
(文若どのーっ)^^

(な、なな、なん…)絶句

(ん?なんだ、長文も一緒か)
(文若殿、遅かったじゃないですか。ささ、こっちに座ってー)肩を抱き寄せ
(…奉孝、もう飲んでるんですか?)
(大丈夫大丈夫、文若殿の分ならありますから)^^
(そういう意味じゃありませんよ…)溜め息
(心配しなくても大丈夫ですよー、そんな飲んでませんってーあはははは)

(…………)







+++++++++

真面目で自分のことを尊敬してる陳羣の手前言わないけど、実はイクは最初から自分がソソ様と花見したかったというオチ。……オチ?(聞くな
陳羣が思うほど品行方正じゃない荀イク。郭嘉はそこらへんを知っててわざと陳羣の前で荀イクに絡んでるといい。

陳羣はサボりまくりな郭嘉にぷっつん五秒前。同じことしてても殿にベクトル向かないのは愛ゆえ!(だといいな

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ