鋼鉄

□尊敬の名
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陸遜は酷く不安だった。

己の師、諸葛孔明が呉にやって来て早二日。
黄祖に擬似玉璽をもたらしたのが師だと分かってから、「心配しなくていい」と他でもない師に諭されて、一時的に不安は消えたものの、やはりどうにも彼の意図が掴めず気持ちは漠然としている。



師が、何を考えているのか分からない。



同じ質問を以前、彼の兄――諸葛瑾にした時には『あいつが何を考えているかなんて誰にも分からないさ』なんて答えまで返ってきた。

皆、師の本当の意を計りかねている。


前々から分かってはいたのだ。皆、師の意を計りかね、周瑜殿などは特に疑い警戒しているように見える。

だからこそ己は師を信じ、力にならなくてはならないというのに。

否、信じてはいるのだ。
ただ彼の行動の意図が読めず、時々不安になる。

師が間違ったことをする筈がないと信じてはいても、その行動の真意が掴めない故に心配せずにはいられないのだ。
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