鋼鉄

□雨の合間に
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広げた指の間からは青い空とそこを悠々と泳ぐ真っ白な雲が見えた。

なんの変哲もないのどかな昼下がり。視界の端に浮かぶその雲が入道雲で、おまけに先程から少し空気が湿って来ていて。
恐らくこれからそう遠くない間に一雨来るのであろうことも、雨の多く蒸し暑いこの呉の地では珍しくもなんともない光景だ。

「…………」

自身に宛がわれた屋敷の縁側に寝転がりながら、諸葛瑾は何をするでもなくそこに転がっていた。食休み、と言えば少しは聞こえも良くなるのだろうが、しかし今の彼がしているのは食休みではなく只の暇潰し、言うならばズル休みである。

呉に士官している以上暇だなんてことはない筈なのだが、だからこそ諸葛瑾は時々こうして一人、思考に老けりたくなることがあった。

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