鋼鉄

□雨の合間に
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いつも人前で飄々として、余裕があるように振る舞い続けるのは既に幼い頃から続けて来た習慣で、慣れたとはいえ元々そういった振る舞いが得手ではなかった故に、こうしてずっと休むことなく続けていると些か疲れる。

出来過ぎとも言える弟の存在を意識して、そのように振る舞い始めたのはいつからだったか。周りの大人達も“優秀な彼”を望んだため、その振る舞いは更に身体に染み付いて、いつからか離れなくなってしまっていた。

だから一人でこうしている時間が実は結構好きだったりする。

一人でいれば弟と比べられることもなかったし、積み重ねた努力を評価さえされず周りから失望の目で見られることもなかった。

己が不出来な訳では決してない。弟である孔明が出来過ぎているのだ。

この呉に士官し、孔明と道を違えて初めて、それが自分の思い上がりではないことを確信した。が、それを周りが認知するかどうかはまた別の話しである。

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