鋼鉄

□滲む背中
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「はぁ…」

屋敷の中庭に拾ってきた犬と共に座り込んで呂蒙は溜め息を吐く。
犬はとうに成獣しているように見えたが、それでも呂蒙の膝の上に乗り、嬉しそうに尻尾を振る姿は子犬とまでもはいかないものの可愛いものだ。

しかし、

元気よくパタパタと呂蒙の膝をはたく尻尾とは対称的に、犬の顔は上がらない。折れた足では自力で上げられないようだった。同様に口も自力では開けられない。拾ってきた当初、鼻先が血に濡れていたが、それは鼻の骨を折っていたからだったのだ。
飯は栄養価の高い牛乳か、水でふやかした米を匙で無理矢理口の中に入れてやるしかなかった。そうやって無理な食事を施す度、犬は目に見えて衰弱していった。

この三日でそれは痛いほどに分かった。最初は底の浅い小さな盃一杯分は食べていたそれを今では半分も口にしなくなった。それでなくとも呉の夏は暑く、夏バテで衰弱する動物は多い。

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