鋼鉄

□桜吹雪と木の下で
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――どうしよっかなぁ

それを見つけることが出来たのは殆ど偶然に近かった。いつもの通りやることの少ない呉の地でいつものように暇潰し相手を探して練り歩き、たまたま魯粛の私邸の前を通りかかった時、偶然風向きで中庭の桜の花びらが目の前を掠めて、――何故か、魯粛がそこにいるとも限らないのになんとなくそちらに足を向けた。

今思えば直感とか、言うものだったらしい。

戦場と主から与えられた任務以外であまり働いたことのなかったそれがこんなところで働くとは思わなくて、思わずその姿を見つけた瞬間、笑いが込み上げた。



一番低いしっかりした木の枝の幹に身体を預けて魯粛がそれはもう気持ちよさげに眠っている。桜が好きだと、如何にもロマンチックなものが好きですとでも言い出しそうな表情で呟いていたのは、どうやら本当だったらしい。

片足が半分ずり落ちて、風で飛ばされたのだろうか、いつもの帽子が木の根元から少し離れた場所に落ちていた。

(あーあ…)

長い間その場に放置されているらしい彼愛用の帽子はすっかり桜の花びら塗れになっていて、同じようにその主を見上げれば彼の髪や服もそこかしこに花びらが付着していて、それはもう見事に花びら塗れだった。

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