鋼鉄
□白黒
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「ねー孔明っ」
「はい」
ゆらゆら、ゆら
「孔ー明〜」
「はい」
ゆらゆら、ゆら
何が楽しいと言うのか、目の前で多様な色彩の中に埋もれ、鮮やかな香りを周囲に撒き散らすこの無邪気な君主は、自分の名を呼んでは特に何を命じるでもなく嬉しそうに笑った。それは只単に花が好きだから、というわけではなさそうだ。
「ねぇねぇ」
ゆらゆら、ゆら
純粋無垢。
しかし世の中の汚さを全く知らないというわけでもない。
「はい」
ゆらゆら、ゆら
目に映る色彩の多さに視界が揺れて、返事をするのにもだんだん疲れてきた。
鮮やかな花よりも鮮やかに、桜色の髪が大地を飛び跳ねる。
それでも根気よく返事をすれば、君主はまた嬉しそうに笑って数歩先を飛び跳ねた。
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