鋼鉄

□縛る時は本人の了承を得ましょう
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――好きな子が泣いてると興奮する


そういう意味で魯粛の泣き顔は最高だ。嬉しそうに笑う顔より困って泣きそうになってる顔とかのほうが断然可愛い。


「おそよう、魯粛チャン」
「な、…っ」



のどかな午後の日差しが差し込む執務室に相応しくない絶叫が響き渡る。昼寝してる間にちょっと両手を縛っただけなのに、飛び起きた魯粛はパニック寸前で既に泣きそうな顔をしていた。




【縛る時は本人の了承を得ましょう】




「…何をそんなにビックリしてんのさ」

思わず拍子抜けする。弄って弄って苛め抜いて、それから泣かすつもりだったのに、いきなり泣き出されるとそれはそれでつまらない。もっとこう、泣き出すまでに我慢してからのほうがいいのだ。

「ふ、普通はビックリします…!」
「そう?」

別にいきなり取って喰おうってわけじゃないんだから、そんなに驚かなくてもいいのに、こちらを見上げる魯粛の表情は恐怖と混乱とで真っ青だ。

(あ、でも…ちょっとイイ感じ)

両手を後手で縛ってある状態で縄を解こうと暴れたせいか、襟元が乱れて隙間から鎖骨が覗いている。おまけに(絶叫したせいで)息は乱れ、頬が微かに上気していて、

「ちょ、なんで馬乗りになるんですか?!」

思わず寝台に押し倒して乗っかると魯粛はすかさず悲鳴を上げた。

「煩いな。別に最初から取って喰ったりしない、って言っただけで後から何もしないとは言ってない」
「ひいい」

宣言通り、無防備に晒されている白い喉笛に噛み付いて、そこから首筋を辿るように愛撫を降らせれば、魯粛はビクリと大きく身体を揺らし、過剰なまでに反応した。

「ちょ、趙雲…」

吐息混じりに細かく震える声に呼ばれて顔を上げれば、睫毛に限界まで涙を溜めた青い瞳がこちらを見つめている。

「何?あれだけなのに感じちゃった?…アンタも乗り気なんじゃん」

唇の端を嘲笑するかのように吊り上げて笑ってみせる。しかし図星を突かれて顔を真っ赤にするだろうと思われた魯粛は趙雲の予想に反して絶叫した。

「恐怖で凍り付いてるんです!そこを退きなさい…!」
「……………」







++++++++++

幾ら泣き顔が好きでも本気で怖がられるとヤる気失せるよねって話し。(…)
趙雲は何気に繊細なのでショック受けてたらいい。

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