その他

□やじるし
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(ぜつぼー先生:青山←芳賀)



 とんとんと芳賀は青山の肩を軽く叩いた。青山は自分の席に座ってiPodで音楽を聞きながら本を読んでいる。芳賀は青山の後ろの席(誰のか知らない)に座っている。それでも青山は気付かなかった。本と音楽に夢中である。芳賀はぴくりと眉毛を動かした。

「青山ー」

今度は声を出して見たがもちろん聞こえていない。無性に腹が立ってしまい芳賀は頬を膨らませた。

「(青山のばか!気付けばか!)」

頭でも叩いてやろうと思ったが手を引っ込めた。にやりと芳賀は案を思い付く。

「青山ってこないだバナナで滑って転んだんだぜ、今どきねぇよなあ!それとさあ、えろ本買おうとしてあっさり断られたりさあ!学ラン着てるから当たり前だっつーの!」

大声で言ってみたが青山はまだ気付いていない。教室にはもちろん生徒がいるが、数えられる人数だ。くすくすと笑う生徒もいれば、呆れている生徒、そして青山と同じように聞いていない生徒もいる。芳賀はちくしょう、と呻いた。いつもなら「何言ってんだよ!」と顔を真っ赤にしてこちらに振り向くのを想像していたのに、見事外れてしまったのだ。
無性に腹立たしく思ったのと反面、今度は寂しくなった。かまって欲しいのなら無理やりにでも振り向かせてやりたい。けれど、それをしないのは青山を試しているのかもしれない。冗談から今はどうやって青山をこちらに振り向かせようかと真剣になっていた。このままだと抱きついて首筋にでもキスだってしていいと芳賀は考えている。ただクラスの目が気になるのでしないが想像だけしてみた。青山が顔を赤くしてまた同じようなことを言うのだろう、芳賀は可笑しく思った。

「(ほんとにキスするぞぉー青ー山ーくーん)」

芳賀は青山に呼び掛けたつもりだがやはり本人は気が付いていない。一人芳賀が楽しそうしているそれを見た木野が近くに寄ってきた。

「何笑ってんだよ?」

「別にー?」

聞けば楽しそうな高い声を出した。木野は首を傾げ、芳賀は早く振り向いてと何度も青山に心の中で呼び掛けている。想像するだけで楽しくて仕方がないようだ。青山は青山で本に夢中である。







早く振り向いて!
そしたらご褒美にキスしてあげる!









後日談

「青山ってバナナで滑って転んだって?」

「え?そんなことするわけないよ。木野、誰から聞いたんだよ」

「芳賀が大声で言いふらしてたぜ?あとえろ本買おうとしたら学ラン着てて買えなかったとか、」

「芳賀アアアアアッ!!!」








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一人でもんもんして、楽しんで、そんな一人相撲な芳賀くんのおはなし。青山←芳賀だと言い張ってみる!
080628

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