甘い空気な文!

□焼き鮭
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(thanks 6 year企画小説/剣♀河付き合ってる前提)












「おめぇのそれはなんだ」

 下着姿の河井に剣崎はいちゃもんをつけてきた。器用にブラジャーのホックを背中で河井はつける。何度も見てきたくせに今更なんだと河井は眉間に皺を寄せる。下着はレースもないし色も華やかではない。灰色のブラジャーとショーツだ。河井にとって下着は無頓着な部類だ。動きやすければそれでいい。大きなベッドの上を剣崎は移動して、どっかりと河井の前に座り込んだ。

「もっと可愛いのつけろよ」

「大きなお世話」

そう言ってる間も剣崎はまじまじと見てくる。品を定めてるようにも見えた。ただ河井の胸はお世辞にも言い難いが小さい。恥ずかしくて仕方がない。

「フッダッセェ色」

パチン。
剣崎がブラジャーを引っ張って放した。

「もう!」

勢いで河井は剣崎を突飛ばした。ベッドの上で数回弾んだが、その勢いで剣崎は身軽に起き上った。すると、今度は羽毛の枕を剣崎の顔に投げつけた。

「あんまり見ないでください!」

いつも見てんじゃねぇか、剣崎は思ったがあえて言わなかった。めんどくさくなったからだ。その間に河井は自分の体を隠すように脱ぎ捨ててあったワイシャツを着込んだ。

「僕がどんな下着をつけようが勝手でしょう」

「フッ萎えんだよ」

じゃあ、さっきまでは何だったのだ。剣崎の一言に河井はふんと鳴らす。ただやはりワイシャツを着ると胸の膨らみは見事に隠れてしまった。少し河井は落ち込んだ。確かに胸はないのだ。昔は気にしていなかった。他にも女性にしては身長は高いことや、声も若干低いことも。ボクシングの強さを求める河井にとって女性らしいことをするのはまっぴらな話であった。しかし、男らしくを振る舞ってきた河井にとって、転機が訪れたのは剣崎と恋愛をする仲になったからだ。今まで気にしていなかったことがコンプレックスとなってしまった。胸があれば可愛い下着もつけたかもしれないし、身長もなければ今時流行っているような服も身に付けたはずだ。ほらベッドの周りに散らばっている私服はズボンだ。スカートなんて履いたことがない。声だって高ければ女性らしかったかもしれない。

「下着に気を使わない女ですみませんね!」

低い声を張り上げた。感情的になってしまった。だから女は面倒だと河井は思ったが、目元には今にも涙が零れそうだ。剣崎は頭をかいた。

「何怒ってんだよ」

「こんな女性らしくない僕ですみませんねっ!」

「そこまで言ってねぇだろう」

「だったら文句言わないでくださいよっ!」

河井は俯くと、ポロリと涙を零した。なんて女々しいのか、嫌になる。ぐずぐずと鼻を啜るばかりだ。剣崎は河井に向き合うと、両足で河井を囲んで離さないようにする。密着しているも同然だ。鼻と鼻が付きそうな距離で剣崎は見つめる。

「おめぇは俺が惚れた女だぞ。もっと自信持てよな」

表情が変わらない顔で剣崎はキスをした。密着しながら言われるとさすがに河井は恥ずかしくなった。剣崎の前だからこそ河井は女性になれる。だからこんなに悩んで泣いたのだ。

「別に俺は女らしいとか、らしくないとか気にしてねえよ」

「だって、あなた可愛いのつけろって言ったじゃないですか」

そうだそうだと河井は鼻を赤くして訴える。

「フッ、それは可愛い奴に可愛いのつけたらもっといいんじゃねえかと思ったからだ。ああ、そうだ。俺が服とか下着選んでプレゼントしてやるよ」

なぜそんなにポンポンと恥ずかしくなる言葉を剣崎は言えるのか河井にはわからなかった。顔が熱くて熱くて仕方がない。河井は再び側にあった枕を持って剣崎の顔に押し当てた。







 後日である。合宿所に河井宛の段ボールがやって来た。送り主はもちろん剣崎である。中を見ればキャミソールやスカート、ブラウス、パンプス、などが入っている。もちろん下着も入っていた。サーモンピンクで白のレースがついている可愛らしいものだ。

「(あの人はこんなのが好みなのか…)」

剣崎が選んでいる姿を想像して河井は我慢出来ずに笑ってしまった。そして今朝、照れながらも河井は貰った服で日本jr.の前に現れた。花柄のTシャツとスカート姿。身長が高くても長い白い足が目立つ。まさしくスレンダーな女性だ。朝食を食べていた石松が茶を吹き出し、志那虎は読んでいた新聞紙で自分の顔を隠した。竜児なんて隠すものがないから顔を赤くして口を空けたままである。珍しく朝食を一緒に食べていた剣崎は茶碗を持ったまま固まっているばかりだ。四人の共通点は顔を耳まで顔を赤くしていることである。

「あ、変ですよね…」

反応が固まっている四人に河井は心配になった。やはり似合わないのだろうか。しかし、石松ら三人そう思っていない。むしろ似合い過ぎているだからこそだ。

「変じゃねぇよ!なあ志那虎のダンナ!」

「あ、ああ…」

「うん、可愛いよ!」

ポカッ。
竜児の頭を剣崎が軽く殴った。何すんのさ、と竜児が口を尖らしたが剣崎は急に立ち上がれば勢いよく河井の元へと向かう。顔が怖いほど強張っている。なぜそんなに怖い顔しているのか。せっかく貰った服を着たのにと河井は機嫌が悪くなる。

「河井、あのな…」

もごもごと剣崎が口ごもる。はっきりものを言う剣崎にしては珍しい。それから剣崎は溜め息を吐いて河井の耳元で囁いた。

「あいつらの前で着んじゃねぇよ」

意外な言葉に河井は驚いた。だがここで照れてはだめだと思い、わざと呆れたような口振りをする。

「あー…なんです?もしかしてやきもちですか?」

「フッ、ちげぇよ」

笑っているわりに剣崎は目を泳がせている。その様子が可笑しくて河井は笑みを浮かべた。

「じゃあ朝食ご一緒にしますね」

一瞬の隙をついて河井はテーブルに向かう。むっと剣崎が口を曲げたが、河井は振り向いてそっと伝えた。

「服ありがとうございました。感謝してますよ」

ふわりと笑う。その笑みが綺麗なものだったので剣崎は心臓を跳ねさせた。口元を剣崎は隠す。照れているのだ。河井は席につくと三人は似合っていると褒め、機嫌を良くする。河井の横の席にどっかりと剣崎は座るが男三人に注意し睨んでいる。さて、いまから朝食だ。手を合わせてから河井は箸を持った。朝食は味噌汁に、焼き鮭、白米、卵焼きだ。早速焼き鮭に箸を伸ばした時、横にいた剣崎は河井の肩を叩いた。

「何で…す…?」

なんと剣崎は河井の肩から無理やりブラジャーの紐を引っ張っり出し覗くかのように見ている。色は朝食にある焼き鮭と同じ色のサーモンピンクだ。

「おっ、あげた奴ちゃんとつけてんじゃねぇか」

剣崎は自慢気に笑みを浮かべる。この自慢は男三人に対してた。しかし、河井を含めた四人はそれ所ではない。志那虎と石松は赤面しながら青ざめ、竜児は口を空けたまま固まっている。そして、河井はわなわなと口を震わせた。

「きゃあああああっ!」

この日初めて河井は甲高い声を上げたのであった。










しょっぱい
焼き鮭
















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ギャグオチ!初めて河井さんにょた書きました。総受け気味かな!胸ぺったんこ河井さんが大好きです!

リクありがとうございました!!
110530

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