甘い空気な文!

□ルーペ
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(テセアポ前提+オルフェウス/さばさばしてるオルがいます、アポロンは出てきません。)








 先日よく知っている二人が手を繋いでいるのを見た。手を繋いでいたのはアポロンとテーセウスで、目撃したのはオルフェウスだ。その二人を一目見てオルフェウスは恋仲だと分かった。なぜ分かったのかというと、手を繋いでいたこともあるのだがアポロンとテーセウスは前々から二人でいるとどこか雰囲気が違っていた。イカルスが「テーセウスはアポロンには優しいよな」と拗ねた口で言うこともあったほどだ。オルフェウスはただ仲が良いだけだと思っていたが、どこかで何かが引っ掛かっていた。しかし、その何かが確信に変わってしまった。

「(あの二人が…ねぇ)」

オルフェウスは少し驚いたがそれだけで終わってしまった。所詮他人事。自分に関係ない。女子のように恋愛話を盛り上げるつもりはない、馴れ初めを聞くこともないだろう。オルフェウスは見たことに目を瞑ることにした。それ以降たまに二人を見て思い出すこともあったが、それを話題にすることも触れることもなく気にすることもあまりなかった。無頓着な性格だなぁとオルフェウスは自分自身に対しつくづく思うのだがどうしようもない。これが自分の性格なのだ。







「ただいま戻りました…あ、」

 昼を過ぎた頃だった。オルフェウスは帰宅すると部屋に一人誰かがいる。それはソファーに腕を組みながら寝ているテーセウスだった。今はシエスタの時間だ。オルフェウスも眠い目を擦った。いったん、上着を近くにあったコートハンガーにかける。外は若干寒かったが部屋はぬくく一息つけた。これは寝るのに最適だとオルフェウスはテーセウスに目を移した。

「よく寝ていらっしゃる…」

寝ているテーセウスを見てオルフェウスはため息をつけると、小さく笑う。真面目で気が荒い男だが、寝ている姿はそんな印象を与えない。ふとオルフェウスはこないだのワンシーンを思い出した。

「(アポロンの前だと…あなたは…)」

オルフェウスは無表情になるとぐいっとテーセウスの口元を指でつり上げた。小さく唸るがテーセウスは目を覚まさない。

「(あんなに優しく笑うのですね)」

目撃したあの時、一目見てなぜ恋仲だと分かったのか。それは生真面目な男の表情が優しかったからだ。不器用で、優しい微笑み。普段から落ち着きがあり優しいアポロンも頬を赤くしていた。

「(私たちの前だとあんな顔見せやしないのに)」

そう思った直後、テーセウスの手がオルフェウスの手首を掴んだのだ。起きてしまった、とオルフェウスは目だけを驚かせたがどこか様子がおかしい。テーセウスは手首を掴んだまま動かない。オルフェウスは首を傾げた。

「あのー…、テーセウス?」

そっと声を掛けて見た。すると、テーセウスが顔を上げる。ただ目は夢心地のようだ。

「アポ…ロ…」

テーセウスの口はそう紡ぐ。愛しい人の名前を呼ぶ。その時の顔がああやっぱり優しいと、オルフェウスはどきりとした。だがこれは立派な人違いだ。オルフェウスは細い眉を眉間に寄せた。

「違いますけど」

「…え?うわっ!す、すまない!」

一気にテーセウスは目を覚ますと、次に顔を赤くしたり青くしたりと忙しい。手首を掴んでいた手もあっさりと離れた。はあ、とオルフェウスはため息をつける。なんだかこっちが恥ずかしいと頬を掻いた。

「あ、その、だ。てっきりアポロンかと…」

テーセウスは口で手で隠し、目線をずらしている。いつものクールさはどこにいったのか。オルフェウスは可笑しくなってくすくすと笑い出した。

「いえ、気にしてませんから」

そう言いながらオルフェウスはテーセウスの横に座った。ソファーはゆっくりと沈む。

「そ、そうか。すまなかった」

ほっとしたのかしきれていないのかテーセウスは息を吐いた。まだ落ち着きは取り戻せていないらしい。オルフェウスはじっとテーセウスを見つめた。恋とはこれほど感情が浮き彫りに出るものなのか。オルフェウスに好奇心が沸いてきた。いまなら恋愛話を楽しむ女子の気持ちがわかる気がする。今更聞くのも照れると思いながらも、オルフェウスはおもいっきって聞いてみた。

「アポロンとはいつからなんです?」

「それはえっと…むっ!?オルフェウス!いつからそのことを…!」

驚くテーセウスにオルフェウスは先日二人が手を繋いでいるのを見たと話した。テーセウスは耳まで顔を赤くする。

「よろしかったら馴れ初め聞かせていただけません?あなたたちを見ていたら聞きたくなりました」

人に無頓着だったはずなのに、とオルフェウスは自分に対して小さく笑う。二人を見ていると幸せそうだなぁと羨ましく思うのだ。困るテーセウスだったが、ばれてしまったのなら隠す必要もないと再び腕を組んだ。話をしてくれるらしい。その前に、とテーセウスはちらりとオルフェウスに振り向いた。

「なぜ聞きたい?」

改めて聞かれるその問いに、オルフェウスは少し間を空けてから微笑んだ。

「さぁ…?」











ルーペの向こう側













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さばさばしてる性格になりましたが興味ないふりして興味あるオルちゃんでした。多分大会前前提話。オルフェウスは影腹の件がありますね。舞台裏でいろいろして、「え!してくれたの!?」っていうのが多そうな子です。ギリシアは昼寝の時間があるんだぜ…羨ましい。
120108

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