甘い空気な文!
□雨天葛藤
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(竜♀河/※河井さんが女の子だよ!)
ぽつり、と雨の雫が河井の肩を濡らした。ぼろぼろの屋根からはところどころ穴が空いてあって、雫がずっとぽたりぽたりと落ちてくる。鬱陶しくなって河井は避けた。だがすでに肩はもちろん服は雨で濡れてしまっていたのだ。白のワイシャツは肌にぴたりとくっつくほどだ。河井は髪をぎゅっと掴むと絞った。
「散々ですね」
河井は斜め前にいる竜児に声を掛けた。竜児もシャツをびしょびしょにしている。裾をぞうきんのように捻ると、水が落ちていった。
「うん、そうだね」
竜児は振り向かない。不思議とそこに河井は違和感を持ったのだが、何も言わなかった。
二人で道を歩いていると突然雨が降ってこのバス停に避難した。バス停の裏は雑木林になっており、まだ夕方だというのに薄暗くさせる。時刻表を見るとバスはさっき出発したらしく、次のが来るまで時間がたっぷりあった。それに2人以外は誰もいない。この道はランニングコースでよく通るのだが、普段から人がいないバス停だ。だからなのか屋根は修理されておらず、ベンチにも枯葉が残ったままである。河井はそこの枯葉を払うと、ベンチに腰をかけた。雨音がよく響く。走って合宿所に帰りたいところなのだが、雨が激しい。バスが来るのが早いか、雨が止むのが先か。
「高嶺くんも座りません?」
ずっと立ったままの竜児に河井は声を掛けるも竜児は「う、うん…」と妙な返事をする。すると、おかしなことに後ろ歩きをしながらベンチに腰をかけた。河井は細い眉を歪ませた。
「高嶺くん?」
「うん、なに?」
「どうして顔をこちらに向けないんです?」
ぎくり、とわかりやすいほど竜児は固まった。何かあるのか。雨が降る前は普通に喋っていたはずだ。このバス停に来てからおかしい。河井は少し不機嫌になった。何も言ってくれない竜児に不満を持ったのだ。ベンチから立ち上がると、すばやく竜児が向いている方向へと移動した。
「高嶺くん!」
「わっ!ごめんっ!見てないからっ!」
何に謝ったのかわからないが、竜児の顔は赤かった。すぐに顔は両手で隠されてしまっったが、必死だった声に河井は思わず「え?」と呟いた。何のことか考えてみたその時、肩に再びぽたりと雨水が滴り落ちた。その肩は白のワイシャツを着ているのに、肌色が目立っていた。ようやく河井は気付くと、両胸に手を置いた。ワイシャツが透け、胸につけている下着が見えてしまっていたのだ。竜児はこれを気にしていた。みるみるうちに河井も顔を赤くするが、竜児ほどではなかった。
「気にしなくていいのに」
ふふっ、と河井からは自然と笑みがこぼれた。竜児のこういう純粋なところが可愛いく思ってしまう。
「だって、その…」
竜児は人差し指同士を自分の目の前で合わせる。いじけてみえるその様子に河井はまた笑った。両腕で河井は胸を隠しながら竜児の横に座った。ずっと顔を合わせなかった竜児はやっと河井と目を合わした。
「女の子なんだから気にしちゃうよ」
「あ、女性扱い禁止ですよ」
まるで先生のように河井は人差し指を揺らせた。河井が女性だというのは世間ではあまり知られていない。チームメイトには女性だと公表はしたが、いままで通り男として接して欲しいと河井は普段から言っているのだ。竜児もいつもはその通りに、いや自然体で接している。ただ今回は…。何も言い返せない竜児は口をつぐんだ。しかし、間を開けてからゆっくりとその口を開けた。
「やっぱり無理だよ…っ。今も上着があれば河井さんに上着かけてあげたり、その…」
言い掛けて竜児は目線を上へと上げた。胸元を意識してしまったのだろう。
「なにかしてあげたいって思うんだ」
顔を真っ赤にして話す竜児に、河井は嬉しいのか恥ずかしがっているのかどちらにも当てはまる表情をしている。いつもなら女性扱いされると怒るのだが、竜児の優しさには参った。
「じゃあ、あの…」
河井はぴたりと竜児の横にひっついた。服は着ているが濡れているせいで肌さえ密着している。
「河井さん…?」
「体が冷えてるんで側にいてください」
タオルもない、上着もない、傘もない。しかし、これなら竜児にも河井にしてあげれることだ。最初は戸惑いを見せたが竜児からも河井に寄り添った。
「うん…」
体は冷たいが、2人なら暖かい。雨の雫が肩に落ちるのだが気にもならなかった。
雨天葛藤
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竜ちゃんはかわいい。公式でも「かわいい」発言されてますもんね!!!
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