甘い空気な文!

□バンパイア
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(剣河)








 真っ暗な部屋の中だった。河井は畳みの上でとても後悔している。体が熱い熱いと悲鳴を上げているが、風邪などではない。今日の天気のせいだった。雲一つない晴天で、外でのトレーニングをして酷い日焼けをしてしまった。顔は赤く、腕も首筋も赤い。日焼けにもっと気をつけるべきだったと後悔ばかりが募る。動くと体が痛くて動けそうにもない。

「最悪…」

河井は一人呟いた。太陽に弱いなんて吸血鬼か。河井は体を動かしてうつ伏せになったが、痛くて口を噛み締めた。すると、暗い部屋に光が差した。吸血鬼なら太陽の光で消滅するだろう。だが河井は人間で、光は人口の物だ。ドアが開き、光を背にそこに立っていたのは剣崎だった。

「うわ、最悪…」

「おめぇ人の顔を見て最悪はねぇだろ、フッ」

剣崎は部屋に入るとドアを閉める。真っ暗の部屋ではあるが、窓から差し込む月明かりで多少は見えた。剣崎は河井の側にどっかりと座ると、起き上がらない河井に眉毛を歪ませた。

「なんだ、疲れてんのか?」

あ、一応は心配してくれてるのか。
河井はそう思ったが言わなかった。体の痛みの方が勝ってしまって休んでおきたいのが本音である。河井は気だるそうに起き上がった。みしりみしりと日焼けしたところが痛い。

「はい、一応」

「だらしねぇな」

「えぇ」

「おい…」

いい加減な言い方に剣崎の眉毛は吊り上げる。機嫌を悪くさせてしまった。河井は自覚はあったが今は気を使うことは出来ない。これは八つ当たりだ。河井は自分自身に嫌悪して溜息をつけた。これ以上話してしまうともっと剣崎の機嫌を悪くさせてしまう。それに自分も苛々が増すだろう。

「だから、もうあなたは…」

帰って下さい、と言おうとしたが突然剣崎が迫ってきた。じっと顔を見てくる。思わず河井は後ろに引いてしまった。

「なんですか?」

「風邪引いてんのか?顔が赤い」

剣崎の手の甲が河井の頬に当てられた。河井は唇を噛み締め、顔をもっと赤くさせた。八つ当たりをし剣崎を疎ましく思っていたのに、この人は本当に心配してくれている。情けない、と河井は申し訳なくなって頭を下げた。自分が情けなくって剣崎と顔を合わせられない。

「……け。」

ぼそりと河井が何かを言ったが剣崎には聞こえなかった。

「ん?」

「…その…日焼けです。だから数日経てば治ります」

すると、剣崎は吹き出した。珍しいほどに笑っている。河井は呆れたがようやく顔を上げることは出来た。体は痛いが気分は良い。

「ハハッ。なんだ、そんなことだったのかよ」

「はいはい。さ、もうあなたは帰って下さい。僕は静かにここにいたいんで…って、うわっ!ちょっと」

突然、河井の赤い頬を剣崎がべろりと舐める。日焼けのせいで熱を持っている肌。ざらりとした舌触りだが痛みと奇妙な感覚に河井は襲われる。されるがままに唇も舐められる。そのまま剣崎の唇は河井の首筋にゆく。いつもより敏感な肌に日焼け以上の熱が上がってゆく。

「あっ…」

思わず河井は声を漏らしてしまった。すると、剣崎は歯をたてたのだ。
そして…がぶり。

「!?痛い!痛い!」

日焼けした首筋を剣崎は噛んだのだ。痛さのあまり河井は飛び跳ねた。歯が離れ、そこにはくっきりと歯形を残していた。剣崎はにやにやと笑い上機嫌である。

「ククッ…、こういうのも面白いじゃねぇか」

「もう!早く出て行って…!…ッ!」

思わず河井は腕を振り上げてしまったのだが、また日焼けの痛みが襲ってきた。時が止まったように体を固まらせる河井。ゆっくりと河井は腕を下げると、すぐにうつ伏せになる。構わないで欲しいという意味を込めての行動だ。剣崎は河井に言われた通りに出て行くことにしたが、笑っている。そんな剣崎が河井には悪魔に見えた。噛まれた首筋がじんじんと痛む。太陽に弱い吸血鬼と血の気が盛んな吸血鬼。どちらが吸血鬼なのか。そんなことはどうでもいい、と河井は噛まれた首筋を押さえながら早く熱が冷めることだけを願った。











二人の吸血鬼!


















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ありがちねたかな?
日焼けって痛いよねー!実経験の痛さを参考にしました…。順ちゃんも肌は白いと思う(アニメ版)。
120829

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