春よ来いな文!

□当たり前
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(jojo3部/承花)











 爪先がまっすぐ伸びている。爪先から足の付け根を追うように承太郎は眺めた。白い足から緑色のズボン、学ランの長い丈、そして目が合った。花京院と。花京院の長い前髪が揺れたかと思ったら、彼はくすくすと笑っている。

「何見てたのさ?」

「…いや別に」

承太郎は短く返事を返した。ローファは脱ぎ捨ててあって、砂の上を花京院は歩いてこっちへやって来る。夜で明かりは僅かなランプと日本よりたくさんある星なのだが、花京院の白い足は不思議と光って見えた。

「承太郎」

花京院は承太郎の後ろに回る。すとん、と花京院は座ると承太郎の目を両手で覆った。承太郎は驚かない。ただ花京院の手についていた砂がさらりとした感触があった。

「だぁれだ?」

暢気な声が暗闇に聞こえてきた。間を開けることもなく承太郎は「花京院」と答えたのがその本人は首を横に振った。

「違うよ」

花京院はくすりと小さく笑った。承太郎はむっと口を曲げる。

「合ってんだろ」

「違うよ。それはファミリーネームだ」

「……」

意図が分かると承太郎は溜め息をつけて、いつもの「やれやれだぜ」と台詞をはく。答えは簡単だ。ただなぜ緊張するのだろう。承太郎は一見涼しい顔をしているのだが、内側は熱を持っていた。

「典明」

承太郎は息を吐くように花京院の名前を言った。目隠している花京院の両手が微かだが、動いたのがわかった。

「うん」

「典明」

「うん、承太郎」

確かめるように花京院は頷く。承太郎に花京院の表情はわからない。うんを言わさず、花京院の両手を承太郎は掴むと下ろさせた。勢いよく承太郎が振り向くと、そこには承太郎が予測していない顔があった。

「なぜ泣く?」

花京院の目尻にはうっすらと涙があった。承太郎の質問を合図にその涙は頬を伝う。花京院はまた小さく笑う。人差し指で涙を拭き取って、砂漠へと落とした。涙は砂に円を描き、砂は泥に変わる。

「嬉しいからだよ」

照れるように微笑んだ花京院からは再び涙が頬を伝った。今度は承太郎が拭き取ってやる。

「名前を呼んで毎回泣かれるんじゃめんどくせぇな」

そう言ってはいるがどこか承太郎は優しさがあった。花京院はあははと声を出して笑う。

「ふふっ。もう泣かないよ、承太郎。一番初めの気持ちが肝心なんだ。当たり前のことになってしまうと感動なんてないだろ?」

「…それもそうだな、花京院」

わざとらしく承太郎は花京院の名前を呼んでやる。いつもみたいだ。満足げに花京院は頷くと目を閉じた。長い睫毛が綺麗に揃った瞬間だ。

「うん。好きだよ承太郎」

「……」

あまりにも唐突過ぎて承太郎は目を見開かせた。珍しく驚いた承太郎の顔に花京院は笑う。それから覗き込むように承太郎の顔に自分の顔を近付けた。

「どう?嬉しい?」

子供に言うような優しい声に、承太郎は自分の頬を人差し指で掻いた。同い年のはずなのに、子供扱いされているみたいだ。しかし、ここで引くわけにはいかない。

「あぁ」

承太郎は力強く頷いた。不意を付かれた花京院は突然顔を真っ赤にする。嬉しいのだが恥ずかしい。それを隠そうと口を噛み締めている。ただ顔が赤いのは隠しきれない。承太郎はほんの僅か口元を緩めた。

「君のポーカーフェイスには敵わないなぁ」

花京院は肩を竦めた。すると、承太郎が花京院の腰を引く。逞しい体にすっぽりと花京院の体は収まった。顔との距離があと数センチ。花京院は再び目尻を熱くさせる。心も体も全体で承太郎が好きだと溢れてくる。

「この気持ちは永遠に感動するんだろうね」

花京院があまりにも綺麗に微笑むので、承太郎は口付けをした。これは一時の気持ちではないと確かめ合うように。










当たり前になる前に
















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承花が好きです。あとがき何書くか数十分考えましたが、承花が好きですしか言えませんでした!
111208

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