春よ来いな文!

□泣いて笑って
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 一体何をしているのだろうか、タミヤは突然襲ってきた脱力感に悩まされた。相変わらず暗い町だが電気が灯れば一応は明るい。明かりが目立つ時間、タミヤは砂利道に座り込んだ。そして横ですすり泣く少年を覗いた。肩まである髪のせいで表情は伺えないが肩が震えている。

「泣くんじゃねぇよ」

タミヤの声は苛立っている。これは無意識ではない、わかってでだ。タミヤはこの泣く少年が好きではない、あまり関わりたくないと思っている。必要以上にこの少年は光クラブの帝王の名前を呼んだ。呼んでも彼がここに来るはずはない、この場所は自分たちの基地よりも遥かに遠い場所なのだ。
なぜこんなところに来てしまったのか、タミヤは巡らせると「ああ、そうだ」と納得する。メンバーで資材集めに行った時だ。資材集めと行っても無人の工場から物を取ったり、或いは店の物を盗む。タミヤは前者だ。しかし、後者であった少年は見つかってしまい逃げていた所をタミヤが発見した。性格なのだろうか、見過ごすことが出来ないタミヤは少年の手を引っ張り共に逃げた。まいたのは良かったがこんな薄暗い場所にたどり着いてしまったのだった。
まだ少年は泣いている。タミヤはがむしゃらに立ち上がった。

「こっからだと遅いけど帰れる、早く行っ」

「僕疲れたもん!歩けないっ!タミヤが一人で行けば!」

苛立つ理由がよくわかったとタミヤは自分の額を押した。泣く少年はずっとこの調子なのだ。そうしている間にも日付が変わる時間へと迫ってゆく。

「じゃあずっとそうしてろっ!」

怒鳴ってからずかずかとタミヤは歩いた。今更ながら本当にほっておけば良かったと後悔した。追われている時も見過ごせばいい、たったそれだけのことなのに手を引っ張り走ってしまった。自分よりも体力がない少年が息を切らせば少し速度を落としたりもした。その時少年はタミヤをじっと見ていたが、見つめられている本人は視線を外した。
砂利道を苛立った歩き方でしていたタミヤは立ち止まった。すべては後ろで座り込み泣いている少年を考えてだ。タミヤは半回転すると少年の元へ戻った。まだすすり泣いている少年にタミヤは手を差し伸べた。

「ほら、帰ろうぜ」

「無理だもん、疲れた」

「俺だって疲んだよっ!その、ほら、背負ってやるから」

あまり考えないで出た言葉だった。だがこのままほっておけない、その気持ちからのものだろう。そして、泣いている姿を見ることがタミヤにとって辛かった。



「キャハッ、本当に!?」

泣いていたはずの少年から明るい声が返ってきた。タミヤが気付いた時にはもう遅い、少年は立ち上がると甲高い笑いを上げた。彼の目に涙はない。

「演技だったのかよ!?」

タミヤが剥きになって文句を言ったが罠にはまってしまった自分に恥じてた。その証拠は赤くなってしまった顔である。

「疲れてるのはホントだよ!キャハッ、タミヤ早く帰ろう!」

勝手に少年はタミヤの背中におぶさった。チクショウ、とタミヤは呟くしかない。タミヤの首に少年は腕を回した。そうして少年は腕に力を込め抱き締めた。


「一緒に逃げてくれた時のタミヤ、かっこよかったよ!」


屈託がない笑みでそう言った。タミヤはその笑顔に見とれ満更でもない表情を浮かべたが足元が覚束なくなってきたせいかさきほど騙されたことを思い出し「へっ!」と声を上げた。






泣いている君にも笑っている君にも僕は弱い










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初らいちがタミジャイ。タミヤはツンデレだと思います!
080531

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