青い春な文!

□映画デート
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(志那石)







 実家に戻った際に居間にファッション誌を見つけた。妹の二葉のもので、やはり年頃の女の子だと兄の志那虎は思った。興味本意で数ページめくるとファッション以外にも、人気スポットやら好きな食べ物、異性に好かれるためには、など書いてある。人気スポットを見ると映画館などが今は人気らしい。志那虎は自分にとって無縁な場所だと考えた。
 数日実家で用事をすましてから、合宿所に戻ればなんと。

「映画…い、行かねぇか?」

その無縁な場所に行かないかと石松から誘いを受けたのだ。これには志那虎は驚いた。石松とは恋愛をしている仲だが、映画に誘われたことは初めてである。出掛けても大抵はランニングコースかコンビニである。

「チケット貰ってよぉ…、行こうぜ?」

首を傾げて話す石松に、志那虎はどことなく可愛いと思って赤面したことは内緒である。ただ石松に違和感を持った。普段ならおおはしゃぎで話すに違いない。それなのにどぎまぎとした様子なのだ。

「竜たちは誘わねぇのかい?」

「あー、チケット二枚でよぉ…」

「なら俺は自分の分も払うぜ?」

「そんなのはいいんだよ、ダンナが払う必要はねぇよ」

口を尖らす石松に志那虎はしっくりとこず頭をかいた。誘ってくれる石松はもっと機嫌が良いはず。今は不機嫌なのか、それとも緊張しているのか。ただ気まずさがあるのはわかるのだ。

「石…無理してねぇか?」

「な、なにがだよ」

効果音があればきっと「ギクッ」というものだ。

「映画」

冷静に志那虎は的確な単語を言い出す。そこでウーッと石松は唸り声を上げた。志那虎は石松の頭を雑に撫でた。観念したのか、石松にしては小さくぼそぼそした話し声を出す。

「俺たち…好きあってんのにでぇとなんてしたことねぇからよ…。たまたま雑誌を読んだらでぇとには映画が人気って書いてあってさ…」

頬を膨らませ、ふて腐れる石松に志那虎は分からない程度にため息を吐いた。そんなことを気にしていたのか、と言いたかったが言えば怒るだろう。それよりも石松が気にしてくれて誘ってくれたのだ。自分のために考えていてくれたのだ。顔は熱くなるばかりだ。試しに顔を触ったが、熱さはわからない。顔が赤くなっていないかが心配だ。石松は黙ってふて腐れ、俯いている。志那虎は肩を下げ苦笑を浮かべた。

「石松…俺は普段通りで良いんだぜ?んな大層なとこ行かなくてもいいんだ」

石松はゆっくりと顔を上げ始めた。ふて腐れた様子はないが、驚いている。

「いつも通りお前とコンビニ行ったり、土手を歩いたりするだけで俺は嬉しいぜ?」

それだけで十分だ。石松は気付かされ、鼻をかいた。

「へへっ…珍しいことするもんじゃねぇな」

いつもの笑顔で石松が照れくさそうに笑う。志那虎はいつも通りの石松に戻って安堵した。しかし、石松はばつが悪そうにする。どうしたと聞けば、石松は申し訳なさそうにするのだ。

「ダンナと行きてぇのはもちろんだけどよ、映画は竜児たちも誘ってみんなで行きてぇんだ」

「なら誘おうぜ」

普段は石松が誘うことが多い。なのに、志那虎から押してくれたのだ。石松ははしゃぎたいくらいに嬉しくなった。

「そうだな!」








「俺、この映画見たかったんだ〜!」

別の日のことだ。映画館で竜児は座席に座り、嬉しがっている。石松は日本Jr.全員を映画に誘ったのだ。相変わらずある一人は来なかったのだが、四人は揃うことが出来た。

「映画に誘うなんて石松にしては珍しいですね」

「お、俺だってなあ!映画ぐらい見らぁ!」

河井の一言に騒ぐ石松だが、そこでちょうど映画開始のブザーが鳴る。一気に石松は静かになり、映画に集中する顔になった。志那虎がその様子を見て小さく笑う。すると、座席に置いてあった志那虎の手に石松の手が重なる。志那虎の耳元で石松がこっそりと囁いた。

「これってでぇとっぽくねぇか?」

「!おめぇさんなぁ…」

ニシシッと上機嫌に笑う石松に対し志那虎は呆れたが、顔の赤さは室内が暗く見えることはなかった。










映画デート












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一応ホワイトデー狙いで書いたものですが全くしてないってゆうね!志那石は本当に書くのが楽しいです。石はみんなとはしゃぎたい子、ダンナは誘われるタイプかな!
110328

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