青い春な文!
□しょうがない
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テーブルに一本。赤ワインが置いてあった。コルクには何回もほじくられた跡があり、誰かがが遊んでいたのであろうと剣崎は推測を立てた。その推測は実は当たっていて、夕食あとに石松はコルク抜きにハマったらしく遊んだ産物であった。もう何回もコルクを抜いたためか、蓋が緩くなっている。あっさりと手でも抜くことが出来た。
そのあとワインを嗅ぐと剣崎は少ししかめっ面を浮かべた。未成年だが料理の味付けにワインが入っていたり、少々はたしなむ程度だけ味わったことがある。しかし、このワインは安物だと剣崎は香りだけでわかってしまった。
「あ、来てたんですか」
ふいに声をした方を向くと河井が立っていた。あまりにもあっけない態度に剣崎はむっとする。仮にも二人は好き合っている同士なのだが、どうも恋愛に持つ好奇心だとがか芽生えはない。興味があると言えばあるが、ないといえばない、そんな二人なのだ。ただこの時ばかりは剣崎も好き合ってる同士だから俺がいたことに喜べはいいのに、とふて腐れた。プライドが剣崎をそうさせるのだ。しかし、そういう剣崎もいざ河井と会えば素っ気ない態度を取る。二人の関係はそういうものであった。
「サボってねぇか見に来ただけだ」
「ちゃんとトレーニングはしてますよ、あとは就寝だけです」
短い会話をしたあと河井はソファーに腰をかけると、持ってきた本を読み始めた。剣崎はそんな河井の様子を見て面白くない、としかめっ面を直さなかったが手元のワインを見ると口の端が上がる。何か面白いことを見つけた子供のような反応だ。
剣崎は河井の元へ歩み寄った。それでも河井は剣崎を見ず本に夢中である。
「河井」
「なんです、…あ!」
バシャリ。
不意に名を呼ばれ顔を上げれば、頭にワインをかけられた。剣崎はニタニタと笑っている。これに河井は呆気は取られたものの勢いよく立ち上がると濡れた本を剣崎の胸に叩きつけた。
「なんてことするんですか!」
それでも剣崎の笑みはやめない。きっと睨むその表情が面白くてたまらないのだ。
「クククッ」
笑う剣崎に河井の怒りは頂点になったが、突然顎を片手で掴まれるとベロリと顔を舐めてきた。
「ああ、やっぱ不味い」
「剣崎!あっ!」
引き離そうと力を込めて胸を叩くが離れず、口や頬を舐めてくる。苦味と酔いが剣崎をそうさせているかのよう。河井も酒の匂いと味に頭がぼぉっとしはじめてきた。もうなすがままである。鼻の頭、額、唇とほとんどを舐められる。口内も舐められ、まるでワインを飲んだような気分だ。
一通り舐め終わると剣崎はニヒルな笑いを浮かべた。
「ごちそうさん」
へたりこんだ河井は再び剣崎を睨み付けるが、頭が痛い。服はワインでびしょびしょになり頬は赤く、酒で酔ったのか、それとも。
「最低ですね!」
満足度に去る剣崎に対し言い放つと、濡れた本をおもいっきり投げつけ見事剣崎の頭にぶつけてやることが出来た。
しょうがない二人
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わたしの中の剣河はこんな感じです。かまってほしい順さま。日米戦前の話、コルクのシーンが好きです。
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