青い春な文!

□泣き蟲
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(※邪鬼と孔士。ほんのちょっとぐろい!)




 床がみしりと鳴いた。それと同時に孔士は目を覚ました。古びた床に壁。部屋に唯一あるものは如来像を象った銅像だ。しかし表情はまさに鬼のような顔。

「それは阿修羅だ」

ゆっくりと孔士は振り向いた。そこには邪鬼が立っていた。邪鬼の手にはお盆がある。それには炊きたての白米と湯飲みがのっている。孔士は睨むことしかしない。邪鬼は視線に気付いてはいるが気にしない。それよりも面白いのだ。睨み付ける目は赤かった。寝ていないせいか、それとも泣いていたのか。泣き出しそうな印象の顔だったが、泣き過ぎて渇ききっているのではないかと邪鬼は想像しては目だけが笑う。邪鬼はふと視線を床に移すと昨日の夕食が置いてあった。食べた形跡がない。

「今日は高嶺に会いに行くぞ」

そう言うと孔士は無表情だ。感情を読み取ることが難しい。

「だから飯ぐらい食べておけ」

床に飯を置いたが手がのびることはない。食べないであろうと予測はしていた。孔士は目を伏せ無言だった。

「ほら食べろ」

ご飯を掴むと邪鬼はつきだした。孔士は睨み付ける。邪鬼は動じない。こんな目は見てきた。たくさん見てきた。

「いらない」

「ずっと食べてないだろ」

「…いらない」

孔士は視線を反らした。その直後、突然邪鬼は孔士の髪を掴むとおもいっきり米を口に突っ込んだ。いきなりのことに孔士は驚くが、負けじと邪鬼の顔を殴る。それでも邪鬼は口を手で覆い続けた。息が苦しくなり、殴ることを止め腕を離そうとするが今度は床に叩きつけられる。はたからみればまるで首を締めているようだ。孔士の爪が邪鬼の腕に食い込み、邪鬼は離すものかと手を押し当てる。この持久戦に観念したのは孔士だった。

ごくり。

と喉を鳴らし、飯を飲み込んだ。手を離せば孔士は咳き込み胸を叩く。休む間もなく邪鬼は孔士の顔を包むかのように触る。じっと顔をみれば、悔しそうに睨むその目には生理的な涙がうっすらと浮かんでいた。

「なんだ、まだ泣けるんじゃないか」

鼻がつく距離で邪鬼はにやりと笑うと孔士の目を舐めた。しょっぱい、と言いながら涙を舐め瞼の表を舌でなぞった。孔士の目にはぐにゃりと歪んだ邪鬼の顔が見えたのだった。






泣き蟲











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ひどい話だ、すみません、孔士ごめん。丸尾作品の目玉を舐めるとこがすごく好きで影響されました。
邪鬼は阿修羅のリーダー的な立ち位置だと思います、楽しくて仕方がない邪鬼さん!
100505

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