青い春な文!

□ままごと
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 「どこの城に閉じ込められてる王子だ、この野郎!」
と石松に怒鳴られたことを剣崎はふと思い出した。コーラを持つとレジへと足が向いた。なんとあのスーパースター剣崎順が大安売りという旗が上がっているスーパーマーケットにいるのだ。行った理由は単純明白である。合宿所にある自動販売機のコーラが売り切れだったからだ。買い物なら使用人に頼んでいるが、今その使用人もいない。呼ぶのは簡単でもその行為がめんどくさい。竜児らに行かせてもよかったが石松が自分で行けと怒鳴り散らした。スーパーマーケットに行ったことがないと話すと石松の怒りは沸点に達し、半ば合宿所を追い出されるような形になったのだ。
とっとと目的の物を買って帰ろうかと思っていたが、見渡していると剣崎にとって面白いものがあるわけで。取り分け興味が沸いたのはお菓子コーナーである。化学調味料だけで出来たお菓子とか、オモチャ付きのキャラメルとか、わっかになっているラムネとか普段(剣崎にとって)あまり見たことがないものだ。

「(くっだらねぇ…)」

そう思いながらも剣崎の口元は少しつり上がっていた。物色していると一際面白いものがあった。

「ん?」

それは手に収まる小さい物だ。手にとって剣崎はフッと小さく笑うと腕の中に他の菓子類共々のっけた。









「わぁ!どうしたのこれ?」

テーブルにはお菓子が散乱していた。ポテトチップスや奇妙な色のスナック菓子、ラムネ、その他もろもろとお菓子パーティー状態である。剣崎は袋からコーラを出すと飲みだした。

「フッついでだよついで。貧乏人が食う菓子だ、おめぇらにやるよ」

「くそぅ〜その減らず口がなければ喜んでやったのによぉ!」

そう言いながらもでかでかと新発売と書いてあるポテトチップスを石松は頬張り出した。横で竜児がどれどれと一枚貰い、美味しいと喜んだ。志那虎は奇妙な色のスナック菓子の原材料を見て、やや顔をしかめている。河井は小さな筒に入っているラムネを食べていた。

「そうだ、河井。これやるよ」

ふと剣崎が声をかけてきた。右手に何かがあるらしく拳を作っている。ただ剣崎の顔が悪戯するような、にやりと笑っているのだ。ろくなものじゃない、と河井は判断する。受け取る手を出さなかった。

「なんです?」

「手を出せ、手ぇ」

「…嫌です」

「良いもんだぜ?」

それでも河井は手を出さない。頑固だなぁと剣崎はうすら笑う。しかし、拒否られても諦めない剣崎は宙に浮いていた河井の左手を軽く掴んだ。本当にそっと優しくである。普段は力任せだというのに意外なことで河井は目だけを驚かせたのだ。剣崎は手を掴んだまま膝をつきしゃがみ込むと握らている手から何かを河井の指に通した。端から見ればまるで忠誠を誓う王子のような―。
伏し目の剣崎を見ていたらふと目が合った。思わず河井は視線を反らしてしまう。満足したかのように剣崎は手を離すと立ち上がる。そうして河井の指に通されたものが姿を表した。

「…指輪?」

疑問系なのは、その指輪はプラッチックで出来ていて宝石が付いている替わりに大きな飴玉がついている。子供用のお菓子なためか指輪のサイズが小さい。指の真ん中までしか入らなかった。

「なんですこれ?」

「フッ似合うと思ってな。どうだ、おひめさま?」

「…そういう冗談はやめて下さい」

呆れた声で返した。フッと剣崎は笑ってコーラを飲み、その場から去ってしまった。
皆がお菓子を食べる中、河井はドアを見つめ溜め息をはく。それから指輪を外そうとした。ただ、なぜ薬指に付いているのか、意識してしまった時点で河井はもう剣崎の思惑通りである。じわりと河井の顔が赤くなった。

「全く…子供だなぁ」

剣崎に対してか、自分に対してか、それとも両方か。指輪を外すと、捨てるわけにも誰かにあげるわけでもなくそっとズボンのポケットに忍ばせた。











ままごと











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昔コンビニに指輪のキャンディがあったんです。意外と飴でかくて食べるの時間かかった。
100616

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