青い春な文!

□知らなくていい
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※『恋する少女』2話目、スピンオフ。竜ちゃんが女の子だよ!












「お、俺さ、河井さんと付き合うことになった」

教室の夕日がさす中、赤面して嬉しそうに話す竜児とは逆に俺は奈落の底に落とされた気がした。

「石松には一番に話しとこって思って」

ああ、相変わらず竜児はいいやつだなぁ。俺ら親友の一番同士だもんな。前から竜児の好きな奴は聞いてた。俺はそいつが好きじゃない、むしろ嫌いだ。なのに、その嫌い奴は俺が好きな子と付き合うんだ。

「そっか、良かったなあ!あ、ちゅうはしたのかよ?ちゅう〜」

ふざけて口を尖らしてみたが、口元に貼ってある絆創膏のせいでうまく出来なかった。小さな痛みが走ったが気にしない。それよりも、竜児の真っ赤になった顔に驚いた。

「え!?あ、そのっ…うん」

ああ、聞かなきゃよかった。冗談で聞いたつもりだったのに。竜児顔真っ赤にして可愛いなあ。竜児は自分で思ってるより女の子だぜ。笑い方が誰よりも優しくて綺麗なんだ。俺だけが知っていたと思っていたのに。

 竜児とは中学から一緒で、話も合って趣味も合って、一緒にいて楽しくて。俺は最初は竜児を恋愛対象にしてはいなかった。好きな奴の話だって中学の頃から聞いてきたし、本当に竜児とは友達関係だった。それなのに俺はいつの間にか竜児を恋愛対象に見るようになった。普段話している時に、竜児が笑ったりすると俺の心臓は跳ねあがるんだ。

「竜、おめでとう」

「うん…ありがとう!」

ほらまたどきんって胸が高鳴った。好きな子の笑みはやはり可愛い。最高だよ。

「よし帰ろっか?」

肩にカバンを背負いながら竜児が言った。しかし俺は動かない。

「あ、先に帰ってくれよ?俺はまだ用があるんだ」

「また喧嘩?」

「ち、ちげぇよ!」

「こないだ喧嘩して怪我してたじゃないか?」

一昨日他校の連中と喧嘩をした。相手に頬を二発殴られたっけ。俺としては無傷が良かった。この口元の絆創膏はその時のものだ。

「勝ったからいいんだよ!」

「勝つのはいいけど次は怪我するなよ?ケンカチャンピオン」

つん、と竜児が絆創膏を触る。そうだ、これは竜児が貼ってくれたんだ。

「わかってらあ!」

高らかに拳を上に上げてガッツポーズをする。竜児は面白可笑しく笑った。

「ふふふ、じゃあね」

後ろを振り返る竜児にスカートが一緒に回る。いつもはジャージズボンを下に履いていたはずなのにそれはもうなかった。くるぶしからスカートの間は素足が見えていた。俺の知らない間に変化はしていたんだ。そのきっかけが俺じゃないのが悔しい。

「竜児…」

「なに?」

「そのよぉ…なんかあったら相談のるからな?」

なんだか照れくさいことを言ってしまった。俺は恥ずかしくなった。顔がこそばい。それでも竜児は俺が好きな顔で柔らかく笑ってくれる。胸が熱い、ああ、やっぱり好きだ。

「…石松ありがとう」

「おう!」

ニッと歯を見せ笑い合ってから竜児が先に教室から出て行った。一気に教室は静かになった気がする。本当は一緒に帰りたかった。昨日見たお笑いのこととか、今朝見た変な夢のこととか、いっぱい、いっぱい下らない話をしたかった。けれど今日だけは出来ない。
まだ治りかけの傷だが口元の絆創膏を剥がしてみた。皮膚が絆創膏に引っ張られて痛い。

「いってぇ…!」

俺の目から涙が出てきた。そうだよ、傷が痛いんだよ、ああ、くそっ、絆創膏剥がすんじゃなかった。

「竜児…いてぇよ…」

霞んだ目で竜児が出て行ったドアを見つめた。日が落ちるまでじっと見つめていたが、誰も来ることはなかった。









知らなくていい気持ち















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石松は竜ちゃんの親友。もっといろいろ書きたい。
100725

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