青い春な文!

□晩御飯
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 今日の合宿所の晩御飯はいつもと違って志那虎にとって懐かしさがあった。味噌汁に、白米、鯖の煮込みにほうれん草のおひたしといったメニューだ。志那虎家は洋食を食べず和食が多く、合宿所のメニューにも和食はあるがどちらかといえば洋食が多い。それに合宿所のメニューはプロボクサー用なためか家庭ではあまり見ないメニューがほとんどだった。だから久しぶりに今回の夕食はいつもと違う雰囲気に感じ、どこか懐かしさを漂わせている。そこへ、この場にいなかった石松がにやにやと笑みを浮かべやってきた。手はエプロンをたたんでいる真っ最中である。

「今日は俺が作ったんだ!どうだ!うまそうだろう!」

自慢気に話すので志那虎は驚くがふっと笑った。

「ほらほら!早く座れよ志那虎のダンナ!冷めちまうぜ!」

石松に肩を押され志那虎は席についた。本来なら四人(たまに五人)で食卓につくのだが、竜児も河井も実家に帰っている。二人だけの寂しい食卓だ。それでも石松は賑かだ。両手を合わせて、給食の風景のように「いただきまーす」と声を揃えた。

「たまにはこういう飯もいいだろう?二人分なら早く作れるからな。それに家の味を食べねえと忘れちまうぜ!」

ここの合宿所の食事も美味しいが、やはり今まで家で食べてきた食事が一番だと石松は考えている。忙しい母親を手伝って覚えてきた料理だ。石松も久しぶりの家の味に食が進み、もう白いご飯はなくなっていた。いつもなら厨房まで行かないとない炊飯器だが、今は同じテーブルに置いてある。横に味噌汁が入った鍋もある。すぐにお代わりが出来るようにと持ってきたものだ。

「ご飯おかわりは?」

「まだいい」

「そうか」

自分の分にだけご飯を入れるとまた勢いよく箸を動かした。なんだか二人きりなのは久しぶりなもんだと石松は味噌汁を飲みながら思った。食べる時はやはり口は喋ることが出来ないので、二人は無言だ。そういえば料理の感想を貰えていないと気が付くが、志那虎は黙々と食べている。

「(俺は何を期待してんだか…)」

石松はむっと口をつぐむ。俯いて鯖に箸をつけた時にふと志那虎が言った。

「上手い、大したもんだな」

石松を見ながら志那虎は小さく微笑んだ。期待していた言葉なのだが石松は半分喜び、半分は珍しく照れた。頬が緩んで仕方がない。

「へへっ、作って良かった」

「俺も石松の手料理が食べれて良かったぜ」

「よせやい」

照れくさくなって鼻の頭をかいた。また作ってやろうと石松は味噌汁を飲みながら献立を考える。次は志那虎が好きなもので揃えよう。志那虎はあまり表情を変えないが、また今日みたいに味わって食べてくれる。

「石松、味噌汁のおかわり頼めるか?」

「おう!」

志那虎からお椀を受けとると石松は元気な返事を返した。綺麗に空っぽになったお椀が嬉しくてたまらない。









二人きりの晩御飯



















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本当はjr.全員いたんですが、その話は削りました。2ヶ月ぐらい悩まされて、削った結果良くなりました。すっきりした内容になったかな!コミックのダンナがおにぎり食べて「うん」って言う台詞が好きです。可愛いと思ったのが発端です。
100816

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