青い春な文!

□ねこおとこ
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(10000hit企画小説)
※当たりさわりはありませんが、少々構造ネタあり。








 何をするわけでもなく、志那虎はただテレビを見ていた。珍しいことにいつもテレビを独占していた石松は竜児と買い出しに行き、河井は楽譜を持って何処かに行ってしまった。志那虎はというと、さっきまで竹刀を持って素振りをしていたが終えてしまって何か見たい番組を見るわけでもなくテレビを見る。画面はコメディだ。流行りだろうか、二人の芸人が漫才をしている。

「フッ、ダンナもそんな番組見るんだな」

突然後ろから声が聞こえた。ソファーに座る志那虎の横には二人分座る空間があるが、一人分を開けてやって来た剣崎がどっかりと反対側に座る。ここにいることこそ珍しい男だ。

「別に見るもんがなかったから付けてただけだ」

「ふーん」

大して剣崎も興味なさそうにテレビを見る。そういえばこの芸人の漫才はよく石松が真似ていたなと思う。竜児が大笑いをして、河井が呆れはてて、志那虎も笑っていた。なのに、今テレビを見ても志那虎は笑わない。面白いとも思わない。

「つまんねー」

志那虎の気持ちを察したかのように剣崎が替わりに言った。

「おい、飲み物淹れてくれよ」

「自分で入れろ」

「コーヒーが良い。ああ、そうか、志那虎はお茶の方がお似合いだよな」

「どういう意味だ」

「そういう意味」

永遠に続きそうなやり取りに志那虎は溜め息を出した。なぜ笑うことができないのか、志那虎は理解した。剣崎がいるからだ。

「…仕方ねえな」

言っておくが、決して剣崎に折れたんじゃねぇからな。

「サーンキュ」

ヒラヒラと手を振るう剣崎の後姿を見てから台所へ向かった。







 簡単にインスタントで作ってから、マグカップを二つ持ってゆく。インスタントでもなかなか良い香りがする。湯気は白かった。戻ると、剣崎は相変わらずテレビを見ている。志那虎は剣崎の目の前にマグカップを差し出したがなぜか頼んだ本人は眉毛を歪ました。

「インスタントじゃ不服か?」

「フッ、こんな合宿所にブルーマウンテンとかねえことぐらいわかってらあ」

相変わらずの言い方だと志那虎はうすく笑ってマグカップを渡す。それから元の場所に座った。テレビはもう次の番組に移っていた。自然とマグカップを持つ手は口元に運ばれる。まだ熱いのだが、これがちょうど良い。志那虎は二三口飲むとテーブルに置いた。しかし、横を見れば剣崎のコーヒーは置いたままである。

「飲まねえのか」

「んな熱いの飲めるかよ」

志那虎は首を傾げた。じっとマグカップを見て、志那虎は目を瞬きさせる。もしや、と何かを考えた。

「ああ、お前さん猫舌か」

その一言だけでテレビを見ていた剣崎は反応をみせた。こちらを向いて小さく呟くような声で「うるせえ」と言った。志那虎はあっけらかんとした。維持になったようで、剣崎はマグカップを持つと口を尖らせ息を数回吐く。なんだかその姿が子供らしさを彷彿とさせた。いつもはあんなにクールな男だというのにコーヒーを冷ますため頑張っているのだ。

「くくっ、ハハハッ」

面白おかしくなって志那虎は腹を抱え笑い出した。じろりと剣崎は睨んでいる。不機嫌が丸出しだ。

「ハハハッ、すまねえ」

「じゃあ、ダンナが冷まさせろよ」

突然マグカップを差し出してきた。まさかそんな頼みをしてくるとは思わなかった。頼むなと言いたかったが、志那虎は受け取ってしまった。剣崎は仏頂面のままテレビに顔を向ける。志那虎はやれやれと思い気付かれないよう笑ってみた。

「(テレビよりおもしれぇもんが見れたな…)」

そう思いながらコーヒーに息を吐いた。











ねこおとこ















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10000hitありがとうございました!
このサイトの順さまは子供っぽいです。ピーマンが嫌いだったり、お菓子が好きだったり。ダンナと順は対等な立場だと思うの!
101020

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