青い春な文!

□後悔するばかり
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(10000hit企画小説)











口は災いの元。
まさにそれだと石松は後悔することになる。





 石松は風呂場にやってきた。それも深夜に近い時間帯だ、テレビを見ていたせいで遅くなったためである。大浴場ではないが、五人は入れる大きめの風呂場に行くと先客がいた。風呂に河井が浸かっていたのである。河井も本を読んでいて遅くの風呂になっていた。

「よぉ河井!お邪魔するぜ!」

石松は手を上げ、良い笑顔を向ける。

「えぇどうぞ」

と河井も普段通りだった。そこまではよかったのだが、石松は体を洗い終わっていざ風呂に浸かろうとした。そこでふと石松は河井を見てドキリと驚いた。風呂に浸かる河井の背中が女に見えたのだ。白い肌に真っ直ぐなうなじ、肩に少しかかるぐらいの髪。まだ風呂にも浸かっていないのに石松は顔を赤くした。その様子に気がついた河井は首を傾げた。

「どうかしたんです?」

「いや、背中だけ見たら女に見えちまうな!」

石松は相変わらずの冗談を話す時の声色だったが、たったその一言だけで河井は怒ったのである。その怒り方はあからさまで、黙ったまま勢いよく風呂から上がり出ていってしまった。ドアを閉じる音も大きい。石松がしまったと後悔した。

「ま、待てよ!河井!」

早々と風呂場から出る。よく体を拭いていないのに着替えて後を追う。部屋のソファーに座って河井はタオルで頭を拭いていた。石松は謝ったが話も聞いてくれない。河井はふて腐れている。その態度に石松はとうとう怒ってしまった。

「仕方ねえだろう!ほんとに見えたんだからよぉ!」

まさに逆ギレというものだ。すると、河井が力一杯石松の腕を引っ張った。突然のことになすすべがない。目を瞑り、恐る恐る開ければいつもの天井が見えた。ただそれは半分で、あとの半分は河井の顔があった。鼻と鼻が付きそうな距離にいる河井がいる。そして、石松はソファーに押し倒されている現実に気が付く。

「か、河井…」

身動きが取れなかった。石松はただ目を見開いていた。

「す、すまねぇって」

笑って余裕をみせる石松だが、心臓がバクバクと高鳴った。河井から返事はない。代わりに河井の濡れている髪から滴が落ちた。本当に河井は怒っている。初めてみる顔だった。

「な、なあ河井放してくれよ?」

「いやだ」

懇願したというのに河井は意地悪な笑みを浮かべる。普段見せることがないその笑みに石松は恐怖した。何をされるのかわからない。

「すまねえって、な…あ…」

言いかけた時、ぴたりと石松は河井の顔を見て止まった。その間もないまま見上げる河井が石松の首に顔を埋める。まだ体の熱が冷めていないせいかシャンプーの香りがよくわかる。河井は首筋に唇を落とした。その首筋にはうっすらと赤みが射す。ゆっくりと顔を離して、河井は石松を見てうすく笑った。石松はまだソファーの上で仰向きになっている。石松は驚きもしていない、ただ天井をあどけない顔で見つめているのだ。

「どうですか?女役は?」

意地悪な声で河井が言った。河井は石松を凝らしめたつもりだった。なのに、石松はゆっくり起き上がり河井と目線を合わすと「ごめんな」と眉毛を下げながら言った。河井は意味がわからなかった。風呂場で発言したことを謝っているのかと思ったが違うと空気が伝える。

「なぜ?」

そのまま直接聞いてみた。すると、思ってもみなかった答えが返ってきた。

「泣きそうな顔してたじゃねぇか」

首筋に迫ってきた時だ、一瞬見上げる河井が唇を噛み締め泣き出しそうな顔をしていたのだ。それで石松は何も言えず抵抗もしなかった。

「本当にごめんな。もう言わねぇよ」

あまりにも優しい声で言うものだから、河井は唇を噛み締めた。今度は自分の行動に恥じらいを持ったからだ。

「かなわないなあ…」

小さな声だったため石松には聞こえなかったらしい。首を傾げている。河井は小さく笑うと肩を竦めた。

「いえ、僕も手荒なことをしてすみませんでした。でもまた同じようなことを言ったら許しませんからね」

「お、おう!わかってるって!」

いつもの雰囲気だ。石松は安堵する。ほっと胸を撫で下ろした。石松は機嫌を良くして風呂に入り直してくる、と言って部屋を出て行った。河井は一人、ソファーの上に勢いよく座ると額に手を置いた。

「大人げないことをした…」

火照っている顔で呟いた。風呂場から石松の大きなくしゃみが聞こえたのはそれからだった。








後悔するばかり













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10000hitありがとうございました!
精神的に石松が大人、河井さんはSっ気があればいいと思います!もっと攻めてる河井さんが書きたかったかな!
101101

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