青い春な文!
□お布団
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寒い夜の便所とは嫌なものだと石松は歯を震わせた。便所帰りの廊下で裸足をぺたりぺたりと寝室に向かう。廊下からはもちろん冷たさが足に伝わり、ふくらはぎに片足を擦り寄せた。それでも温くなることはなく、肩を震わせる。
「(さっみー!)」
寝室に着いた頃には温もりがあった布団は冷えていた。周りを見れば竜児ら三人は暖かい布団に入り、夢の中である。羨ましさのあまりふて腐れたが、しぶしぶと布団に入る。やはり冷たく、石松は両足を擦り合わせた。
「(便所行くんじゃなかったぜ、でも我慢は出来ねぇし…)ん?」
石松の目に入ったのは横で寝ている志那虎だ。ニヤリ、と石松は笑うと立ち上がる。志那虎の元へゆくとその布団に石松は入り込んだのだ。
「失礼するぜダンナ〜」
「…お…う」
志那虎は寝惚けながら返事をする。チクタクと時計が音をたてた瞬間、志那虎は飛び起きた。志那虎の顔は真っ赤である。
「い、石…!」
「さみぃー!布団!布団!」
布団がなくなり縮こまる石松が声を上げる。
「あ、ああ…」
布団に志那虎は戻ったが落ち着くはずもなく、石松と顔を合わせた。
「なんで俺の布団に入ってきたんだ」
「さみぃからよぉ…いいだろ?」
にひっと石松は笑う。志那虎は困った顔をしながら頭をかいた。
「いいと言われてもなあ…」
「懐かしいぜ、よく妹と弟らと一緒に寝たもんだ」
機嫌良く石松が話すものだから志那虎は小さく笑った。石松に自分はとことん甘いらしい。布団を均等に真ん中に移動させ、石松が寝れるようスペースを開けた。それでも石松は志那虎にくっついてくる。石松の足が志那虎の足にぴたりと当たる。
「ん?足が冷てぇじゃねぇか」
「ああ、さっき廊下歩いたからよぉ…おっ?」
志那虎の足が石松の足を挟んだ。温くて居心地が良い。
「よく二葉が怖い夢を見たと言って布団に潜り込んできたものだ」
志那虎は目を瞑りながら言った。優しい兄の顔をしていたので、石松はなぜか照れた。こういう時の志那虎の顔がどうやら好きらしい。布団に石松は顔を隠すように潜った。足も体も顔も充分暖かい。こっそり顔を出して志那虎を見たが目を瞑っている。静かな寝息が聞こえてきた。
「おやすみ志那虎のダンナ」
微笑むと石松は志那虎の大きな手を握り目を瞑った。
お布団
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この話の大いなる萌はまさかの二葉ちゃん。
本当はギャグおちにしたかった。竜ちゃんと河井さんとなぜかいる剣崎が寝てる二人を目撃して、剣崎が赤飯食べようとか言い出して志那虎が真っ赤になるそんなオチ!
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