黒猫小屋
□ぶらざーそうる
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帽子を脱いで隣に腰を下ろすと、不寝番の──ウソップといったか──鼻の長い男が毛布を一枚彼に差し出した。
「おぉ、こりゃ悪いな」
エースはそれを笑顔で受け取り、肩からしっかりと身体に覆い被せる。肌寒さはその毛布に吸い込まれていった。
「あったけー。やっぱ冷えるよなぁ、夜は…」
彼は呟いて炎に手をかざす。
ギョッとするウソップを後目にその焚き火に手を突っ込むと、小さな炎が勢い良く燃え上がった。
これが彼、メラメラの実の能力者の力の末端。自在に炎となり、炎を操る。
その力を改めて目の前で確認したウソップは、感心したようにその炎に瞳を輝かせて彼を見つめた。
「んぁ?何だ?」
「あ、いや…」
「怖ぇか?」
「いや、ち、違いますっ!!」
ニッカと笑って指先に炎を灯す彼にウソップは大きく首を振る。
その素直な反応は逆に清々しい。
畏れと羨望。
普段ならあまり好まない反応だったが、この青年に対しては嫌な気はしなかった。
それは彼の特異でひょうきんな外見の所為もあるのだろうがそれ以上に、そのにじみ出る人の良い雰囲気。