頂き物

□自称兄と通称オカンの奮闘記
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尋ねたジェイドに、佐助は笑ったまま答える気配はない
おろおろとルークは佐助とジェイドを見比べる

そしてそろそろと佐助を見上げた


「こいつら、マルクトから来た和平の使者なんだってよ」
「は?和平?」
「って言ってた、イオン…あそこで倒れてる奴が導師って言ってたし、本当だと思う」


ルークの言葉を聞いて、佐助は呆れたように溜息をついた

佐助は先程気絶させたイオンをちら、と見る
気絶させちゃやばかったかなーなんて思うが、正当防衛になるだろうとうんうん頷いた


「で、あんたが和平の使者の頭って訳ね…」


ジェイドは否定も肯定もしないが、後ろでルークがぶんぶんと縦に首を振っている


「坊ちゃん騙されちゃダメでしょ、素直なのはいいことだけど」
「何が?」
「あんなんが和平の使者って、何の冗談?」


無い無いと手を振る佐助に、ルークは首を傾げる
ジェイドは槍を握り直し否定を続ける佐助を睨んだ


「冗談はあなたでしょう、私のどこが」
「本気で分かって無いわけ? うっわ、うちの旦那の方が頭いいかもって思ったのなんて俺様初めてだわ」
「お前、それユキムラに失礼だぞ…」


思わず言ったルークに内緒ね、なんて返しながら佐助はジェイドを見た

先程からどんどんと殺気を増すジェイドは、プロである佐助から見れば感情が駄々漏れ
何を考えているかさえ分かりそうなそれに佐助は内心溜息をついた

ルークの扱いからしておかしいと思ったが、どうやら自分の落ち度に全く気付いていないらしい

だがおそらく和平は真実だろう
目の前のジェイドの嘘に気づかないほど佐助は落ちぶれてはいない


「まっ、どうせ和平なんて潰れんだし、ちゃちゃーっと帰ろっか」
「な」
「何で?なんて聞かれて答えるほど、俺様親切じゃないんで」


ひらひらと手を振り、今度こそ脱出しようとして


「あーあ…」


溜息をついて額を抑える


「どうしたんだ?」
「待っててって言ったのに、なんで我慢できないかなぁ…」


人より優れた聴覚に、聞き慣れ過ぎた声が聞こえた
続いてタルタロス下部から聞こえる爆音にジェイドも顔を顰める

何故来た、なんて聞かなくても分かる

佐助はちら、と横目でルークを見た
ルークはこの部屋まで届くような爆音に、本人も気付いているのかいないのか、さりげなく佐助の服を握る


「(まーたこんな可愛いことしちゃって…だからこそ放っておけないんだろうけど)」


平気だ平気だと言っているくせに、その眼は不安で一杯で
いつだって無理して背伸びして

佐助は伸ばした手でルークの髪をくしゃりと撫でた

最初は、これほど綺麗な人間がいるのかと触れることさえ躊躇っていた
でもルークは佐助に手を差し伸べて、触れると不安そうに揺れる目にほっと安堵を浮かべるのだ


「噂をしたら影、ってね」


ルークへと笑いかけながら言う
ルークは首を傾げていたが、次の瞬間


「うおおおおおおぉぉぉぉ!!!某の弟を返してもらおう!!真田源二郎幸村、いざ参る!!!」


「ッユキムラ」
「旦那の声ってほんと大きいよねぇ…坊ちゃんが俺のこと呼んだ時も似たようなもんだったけど」



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